VMwareのライセンス形態が変わった影響もあり、Azure VMware Solution(以下、AVS)の引き合いが増えてきました。
今回は、クラウドへの移行ツールであるVMware HCX(以下、HCX)のアップグレード手順を記載します。
※ 本記事ではアップグレードの例として、バージョン4.7から4.8へアップグレードを実施します
AVSに関する記事を過去にも複数書いておりますので、併せてご覧ください。
HCXのコンポーネント
HCXのアップデートには大きく2つの手順が必要になります。
- HCX Managerのアップグレード
- HCX Cloud
- HCX Connector
- ServiceMeshアプライアンスのアップグレード
HCX Manager
HCXの管理コンポーネントです。以下の2種類に分かれます。
- HCX Cloud:AVS側(移行先)
- HCX Connector:オンプレミス側(移行元)
ServiceMeshアプライアンス
ServiceMeshはマイグレーションやL2延伸の機能を実装する各コンポーネントで構成されます。オプションにより構成は異なります。
- HCX Interconnect(以下、HCX-IX)
- 移行用にIPSec VPNを構成し、仮想マシンのHCX vMotionおよびCold Migration/Bulk Migrationを実行します。
- HCX WAN Optimization(以下、HCX-WO)
- HCX-IXと連携し、帯域制御および通信の最適化を行います。
- HCX Network Extension(以下、HCX-NE)
- L2延伸用にIPsec VPNを構成し、オンプレミスの分散ポートグループをAVSのvSphere環境へL2延伸を実装します。
HCX Managerのアップグレード
HCX Managerのアップグレードは、AVSのHCX CloudとオンプレミスのHCX Connectorでそれぞれ実施します。
HCX Cloudアップグレード手順
- ブラウザから「https://HCX CloudのIPアドレス」を入力し、cloudadminでHCX Cloudにログインします。
- 左ペインの「System Updates」から対象のHCXを選択して、「Check for Updates」を押下します。
※自動で事前チェックされている場合は不要になります。 - 事前チェックが完了すると、Statusにアップデート可能なバージョンが表示されます。
- 事前チェック完了後、「SELECT SERVICE UPDATE」から最新のバージョンを選択して、「Download & Upgrade」を押下します。
- 「OK」を押下します。
- アップデートが開始されると、Statusが進行します。
- アップグレードからしばらく経過すると、下図のメッセージが表示されます。
- アップグレードの進行中に「Service Not Available」が表示され、一時的にHCX Cloudに接続できなくなります。
※30~40分ほど接続できなくなるので、焦らず待ちます。
- アップデート後、HCX Cloudに接続できるようになったら、再度cloudadminでログインします。
- 左ペインの「Site Pairing」から、サイトペアリングが正常なことを確認します。
- 左ペインより「System Updates」を選択して、バージョンが上がっていることを確認します。
以上で、HCX Cloudのアップグレードは完了です。
HCX Connectorアップグレード手順
- ブラウザから「https://HCX ConnectorのIPアドレス」を入力し、オンプレミスvCenterの管理者ユーザーでHCX Connectorにログインします。
- 以降の操作は、HCX Cloudアップグレード手順2.~11.と同様になります。接続先はHCX Connectorとなります。
ServiceMeshアプライアンスのアップグレード
ServiceMeshアップグレード手順
ServiceMeshアプライアンスのアップグレードは、HCX Connectorで操作します。
- ブラウザから「https://HCX ConnectorのIPアドレス」を入力し、オンプレミスvCenterの管理者ユーザーでHCX Connectorにログインします。
- 左ペインより、「Interconnect」-「Service Mesh」-「UPDATE APPLIANCES」を押下します。
- アップグレード対象として表示された仮想アプライアンスを選択して、「UPDATE」を押下します。
※例では、アップグレード対象はHCX-IXとHCX-NEになります。 - 選択した仮想アプライアンスのアップグレードが開始されます。
※AVSとオンプレミス両方のアプライアンスでアップデートが開始されます。 - アップデート完了したら「VIEW APPLIANCES」を押下します。
- バージョンが上がっていることを確認します。
以上で、ServiceMeshアプライアンスのアップグレードは完了です。
補足
- HCX-NEを冗長構成にしている場合、Active/Standby構成となります。
- アップグレードを実施すると、Standby側からアップグレードされます。
- Standby側のアップグレードが完了したら、Activeになり、元々ActiveだったNEのアップグレードが開始されます。
※その際にPingが1つ落ちる程度の瞬断が発生します。 - アップグレードが完了したらStandbyになります。自動でフェイルバックは行われません。
終わりに
HCXは頻繁にバージョンがアップグレードされ、12か月でサポートが終了します。定期的なアップグレードの計画が必要となります。
以下は直近のHCXのバージョンになります。
- 2024-07-26:4.10.0 *1
- 2024-05-20:4.9.1
- 2024-03-26:4.9
- 2024-02-14:4.8.2
- 2023-11-21:4.8
アップグレードパスやVMwareバージョンの互換性については、Product Interoperability Matrixから「Upgrade Path」と「Interoperability」を参照してください。
*1:2024/10/3時点最新バージョン
野中 邦政(日本ビジネスシステムズ株式会社)
ハイブリッドクラウド本部に所属 カスタマーエンジニアから始まり、サーバー・ネットワーク・ストレージ・仮想化・VDIの設計や構築など色々担当、ここ数年はプラットフォームがクラウドになりました。 プライベートでは娘の将来について設計をしていますが、まったくうまくいきません。
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