オンプレミス環境をAzure VMware Solution(以下AVS)環境へ移行すると、従来のVMware環境の使用感・UIをそのままに環境をAzure移行・拡張することが可能です。
移行の際にはVMware HCX(以下HCX)での移行が選択肢の一つとして挙げられます。
しかし、移行する前に対象仮想マシンでの要件や設定を見直しておかないと、移行前の検証や移行で失敗する可能性があります。
本記事では、実際にHCXでの移行をした際に直面したエラーや注意点をご紹介します。
HCXでの移行方式について
注意事項の前に、移行方式について簡単に紹介します。
HCXには移行方法が複数あり、要件や移行するシステムに合わせて選択が可能です。
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移行方式 |
vMotion |
Cold Migration |
Bulk Migration |
Replication Assisted vMotion (RAV) |
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特徴 |
無停止状態での移行 |
停止状態での移行 |
一括移行 &移行元に仮想マシンが残る |
無停止状態での一括移行 |
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仮想マシン電源状態 |
起動中 |
停止 |
起動中 |
起動中 |
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同時移行台数 |
1台 |
1台 |
300台 |
300台 |
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仮想マシン ハードウェア要件 |
バージョン 9 以降 |
バージョン 9 以降 |
バージョン 7 以降 |
バージョン 9 以降 |
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ダウンタイム |
なし |
- (停止状態で移行) |
あり (切替前にOS再起動) |
なし |
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最小帯域幅 (Mbps) |
250 |
250 |
250 |
50 |
例えば、「1台ずつ移行を実施」かつ「ダウンタイムはなし」という条件がある場合、ダウンタイムが発生するCold MigrationとBulk Migrationは選択肢から外れます。
次に、条件が「10台同時に移行を実施」に変更されるとRAVとなる、のように、移行時の条件に合わせて移行方式を選択することが可能です。
表の項目以外の制限事項や前提については、Broadcomのサイトをご確認ください。
また、表に記載した4つの移行方式以外にも「OS Assisted Migration」という移行方式があるのですが、これはvSphere以外の仮想マシンの移行方式となり、少しレアケースとなるので今回は対象外としています。
移行検証時のエラー
HCXでの移行をする際には、以下のような設定画面に設定値を入力します。

入力後に右下の「VALIDATE」をクリックすることで、検証要件を満たしているかどうかの確認ができます。
ここでは、この「VALIDATE」で検証した際に発生するエラーについて紹介します。
ISOファイルマウントエラー
1つ目のエラー文は以下です。
External device(s) : CD/DVD drive 1 detected on <仮想マシン名>. Please unmount the ISOs to proceed.
こちらは、移行対象の仮想マシンにISOファイルがマウントされているため発生してしまうエラーです。
vCenterから確認できる仮想マシンの設定画面にて、CD/DVDドライブ設定の「接続中」または「パワーオン時に接続」のチェックが入っていると、ISOファイルがマウントされているとHCX側から判定され、エラーとなります。

このエラーに関するBroadcomのサイトは以下です。VMC(VMware Cloud on AWS)に関する記事ですが、AVSの環境でも共通する内容となります。

このエラーに対する方法は2つあります。
対処法1:vCenterでのディスク設定変更
1つ目は、vCenterより原因となるディスク設定を変更することです。
対象仮想マシンのサマリ画面より、ディスク設定の「接続中」または「パワーオン時に接続」のチェックを外し、再度「VALIDATE」をすることでエラーは解消されます。
対処法2:HCXからISOファイルをアンマウント
2つ目は、HCXの設定画面よりISOファイルをアンマウントすることです。
設定値入力画面の「Switchover」を展開すると、オプションが表示されます。
そのオプションのうち、「Force unmount ISO images false」にチェックを入れることで、移行時にHCX側からISOファイルのアンマウントを実施することができます。

実際にチェックを入れてから再度「VALIDATE」を実施すると、以下のようにエラーではなく警告の表示に変更になります。
この表示になれば、移行を実行することが可能です。

仮想ディスクサイズエラー
2つ目のエラー文は以下です。
Disk size is not a multiple of <ディスクサイズ>. RAV/Bulk migration is not supported
こちらは移行対象の仮想マシンのディスクサイズの値が、移行の要件を満たしていないため発生してしまうエラーです。
少し特殊な要件ですが、仮想マシンのディスクサイズをHCXの求める特定のブロックサイズの数値にしないといけないというエラーになります。
どの数値に修正するかは、対処法の部分で記載します。

このエラーに関するBroadcomのサイトは以下です。
対処法:vCenterでのディスク設定変更
このエラーでの対処法は、vCenterより原因となるディスクサイズの値を変更することです。
Broadcomに記載されているディスクサイズの要件を簡単にまとめると、以下になります。
|
ディスクサイズ |
ディスクサイズの指定方法 |
具体例 |
|
2TB以下 |
(1)8KB(8192 bytes)の倍数を指定 (=GBで整数値を指定) (2)TBで特定の少数点を指定 |
(1)200GB,1300GB (2)1.25TB,1.625TB |
|
2~8TB |
(1)16KB(16384 bytes)の倍数を指定 (2)TBで特定の少数点を指定 |
(1)2TB,8TB (2)2.125TB、5.5TB |
|
8~32TB |
(1)32KB(32768 bytes)の倍数を指定 (2)TBで特定の少数点を指定 |
(1)16TB,32TB (2)8.375TB,10.75TB |
|
32~64TB |
(1)64KB(65536 bytes)の倍数を指定 (2)TBで特定の少数点を指定 |
(1)64TB (2)32.25TB,42.875TB |
指定したいディスクサイズによって、指定方法に違いがあります。
どのディスクサイズでも、「特定の数値の倍数」という指定があるのですが、2TB以下の「8KB(8192 bytes)の倍数を指定」については、1GB が8192 の倍数となるため、GBで整数値を指定すればどの数値でも問題ありません。
また、「TBで特定の小数点を指定」について、指定可能な特定の小数点は以下7つになります。
- .125
- .25
- .375
- .5
- .625
- .75
- .875
上記以外の小数点を指定している場合は、エラーが発生してしまいます。
エラーの対応として変更する場合は、元々の設定値があるため、要件に合う指定方法で同じ値、または近い値で指定する形になります。
※ 画像のように、ディスクを追加していて2つある場合は、どちらも要件を満たしている必要があります。

データ転送時の差分アラート
こちらはエラーではありませんが、移行開始後にHCXで頻出するアラートがあるので、参考情報として紹介します。
HCXのアラートはHCX ConnectorまたはHCX Cloudにログインし、左側のタブの「Administration」-「Alerts」にて確認できます。

アラート文は以下です。
High data churn detected for the Virtual Machine corresponding to the migration
移行時に仮想マシンの切替日を指定している場合、指定日時より前に仮想マシンデータの初期転送が完了すると、切替日まで差分同期を継続します。
その際に、ネットワーク速度やデータ変更速度が一定値を超えた、または下回った場合に移行が失敗する可能性がある場合に発生してしまうアラートです。
以下画像が実際のエラー画面です。

「Component」の部分には、対象の仮想マシン名が記載されています。
画像では、「Severity(重要度)」がCriticalのアラートの後にinfoのアラートが出力されています。
これはネットワーク速度やデータ変更速度が一定値を超えた、または下回った状態から回復した情報となり、基本的にはこの情報が出力されている場合は静観して問題ないアラートです。
ただ、回復の情報がなく長期間アラートが出力されたままの状態である場合は、移行や仮想マシンに影響がある場合があるので、仮想マシンのログ確認や必要であればMicrosoft やBroadcomへの問い合わせの実施をお勧めします。
おわりに
今回は、AVSでの移行時に遭遇する可能性のあるエラーやアラートについて紹介させていただきました。
エラーに関しては移行前の検証で確認できる内容となるので、大きな環境での移行時には事前に検証のみ実施して対策しておくのがいいかと思います。
ご覧いただきありがとうございました!
山﨑 日南子(日本ビジネスシステムズ株式会社)
ハイブリッドクラウド部門に所属。主にAzure(IaaS)製品、VDIソリューション(Azure Virtual Desktop)の設計、構築に携わっています。
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