Azure VMware Solutionで実現する、簡単で迅速なクラウド移行のステップ (1)

Azure VMware Solution(以下、AVS)が一般提供がされて数年経過しました。

いまだに案件の引き合いも多く、導入実績もできているため、このブログではAVSのデプロイからネットワーク接続・L2延伸による移行方法などを記載していきます。

※記載の内容は執筆時点の公開情報を元にしております。

はじめに

AVSとはMicrosoft Azure上で、VMware社のvSphere環境を提供するサービスです。

オンプレミスでvSphereをご利用の方は多いと思いますが、AVSと接続すれば稼働中の仮想マシンをIPアドレスの変更をすることなくクラウドに移行できます。また、リソースが足りなくなった際のESXi追加もポータル上から数クリックで完了します。

AVSをデプロイすると以下の構成*1でvSphere環境(以下、プライベートクラウド*2)が構築されます。

  • VMware vCenter Server:7.0 U3c
  • VMware ESXi:7.0 U3c
  • VMware vSAN:7.0 U3c
  • VMware NSX-T :3.2.2
  • VMware HCX:4.5.0
    (以下、VMwareは省略)

プライベートクラウドとオンプレミスの接続

AVSのユースケースとしてニーズが高いのは主に以下のケースになるかと思います。

  • オンプレミスの移行先
  • データセンターの拡張としてハイブリッドクラウド
  • 災害対策のDR環境

いずれにしてもオンプレミスとの接続が検討されます。
AVSのプライベートクラウドとオンプレミスを接続するにはExpress Routeが必要になります。*3

Express Routeでオンプレミスと接続しても、AVSとオンプレミスでそれぞれのvSphere環境が構築されているだけの状態となりますので、HCXを利用してお互いのvSphere環境をペアリングします。

HCXでペアリング後、HCXの機能を利用してオンプレミスのワークロード用仮想マシンが配置されているvDSをAVSのプライベートクラウドまでL2延伸することで、IPアドレスを変更することなく仮想マシンをAVSにvMotionすることができます。

概略図

AVSデプロイの準備

Azureを利用していても、いきなりAVSはデプロイできません。まずはホスト クォータのリクエストをします。リクエストをしないと下図のようなエラーが発生し、デプロイはできません。

 

AVSのデプロイ

AVSを検討するにあたり既存環境の調査・ユースケースや移行対象の明確化・サイジング・利用料金などの考慮事項が多々あるのですが、本ブログでは、まずは作ってみることを目的にAVSをデプロイします!

(1)Azureポータルにログインして、「Azure VMware Solution」を押下します。

 

(2)「AVSプライベートクラウドの作成」を押下します。


(3)「基本」タブに必要な情報を入力し「確認と作成」を押下します。

  • リソースグループ:新規作成でも事前に作成して選択でもOK
  • リソース名:AVSの名前(任意)
  • 場所:デプロイするリージョン
  • ホストのサイズ:現時点ではAV36 Node一択
  • ホストの数:最小3ノード
  • CIDR アドレスブロック:/22の範囲でプライベートクラウドのアドレスを指定
    ※Azureやオンプレミスと重複しないアドレス範囲を指定します。


(4)検証に成功したら「作成」を押下することで、約4時間弱ほどでリソースグループにAVSが作成されます。Azureポータルで表示されるリソースはシンプルにAVSのみです。vCenterなどのコンポーネントはリソースとして表示されません。

 

AVSのプライベートクラウドにはESXi、vCenterサーバ、vSAN データストア、NSX-T Manager×3台、NSX-T Edge×2台が自動的にデプロイされ利用可能な状態となります。
※HCXは後から利用可否に応じてAzureポータルからデプロイします。

AzureポータルからESXiのノード数、vCenterやNSX-T ManagerのIPアドレスやユーザー名/パスワードが確認できます。

 

概要図では赤枠の範囲が構成されました。この段階ではどこからもvCenterやNSX-T Managerに接続できないプライベートクラウド環境となります。

概略図

終わりに

オンプレミスでは互換性の確認、機器選定・調達、L2やL3のネットワーク検討、データセンターや配送の手配、ラックマウント後に各コンポーネントのインストール、などが発生すると思いますが、クラウドではそういった手間をかけずに、簡単にvSphere環境が構築できました。

次回は、プライベートクラウドを利用するためのAzureおよびオンプレミスへの接続を記載します。

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*1:2023年4月時点

*2:AVSのvSphere環境はプライベートクラウドと呼びます。

*3:HCXがVPN接続もサポートしていますが本番環境ではVPNを利用しないと思いますので、本ブログではExpress Routeを前提とします。

執筆担当者プロフィール
野中 邦政

野中 邦政(日本ビジネスシステムズ株式会社)

ハイブリッドクラウド本部に所属 カスタマーエンジニアから始まり、サーバー・ネットワーク・ストレージ・仮想化・VDIの設計や構築など色々担当、ここ数年はプラットフォームがクラウドになりました。 プライベートでは娘の将来について設計をしていますが、まったくうまくいきません。

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