前回の記事では、AsyncDRの概要と設定方法の紹介をさせていただきました。
今回はNutanix仮想基盤への移行をサポートするNutanix Moveついて紹介していきます。
本章での検証範囲
本記事では、前回の記事で紹介した6ステップのうち、ステップ5の「Nutanix Move 移行方法」について記載します。
- Nutanix CE インストーラー入手
- Nutanix CE デプロイ&クラスター作成
- Prism 基本設定
- Async DR 方法
- Nutanix Move 移行方法
- Flow 利用方法
Nutanix Moveについて
Nutanix Moveとは、VMwareやHyper-Vなどの仮想基盤からNutanix AHVの環境への移行をサポートする、無償のツールになります。
Nutanix Moveの特徴は以下となります。
- 最小のダウンタイム
- 移行に必要なダウンタイムがほとんどない
- リスクフリー
- 元のデータストアやプラットフォームの削除や変更をしないため、ニーズに応じてロールバックできる
- 移行プロセス
- VirtIOドライバーのインストールやIPアドレス、MACアドレスの保持など、移行プロセスの多くが自動化されている
Nutanix Moveポート要件について
Nutanix Moveのポート要件は以下となります。
- ESXi 移行の要件
- ESXi ホスト
- ポート TCP 443 および TCP 902 で Nutanix Move から到達可能である必要がある
- vCenter Server
- Nutanix アプライアンスからポート TCP 443 で到達可能である必要がある
- Nutanix
- Nutanix MoveネットワークとAHV CVMネットワーク間のポート2049および111(いずれもTCPおよびUDP)を許可する
- ESXi ホスト
- Hyper-V 移行の要件
- WinRM-HTTPS
- ポート 5986 を使用して通信する
- WinRM-HTTP:
- ポート 5985 を使用して通信する
- RDP
- ポート 3389 (インバウンドのみ) を使用してリモートデスクトップ接続を許可する
- SSH
- ポート 22 を使用してセキュアシェル接続を許可する
- WinRM-HTTPS
Nutanix Move 利用方法
それでは、Nutanix Moveのインストール方法や設定手順を解説していきます。
Nutanix Moveのインストール
以下のURL(サポートサイト)にアクセスし、Nutanix Moveのイメージをダウンロードします。
https://portal.nutanix.com/page/downloads?product=move
※今回はESXi環境にNutanix Moveを構築するため、Move OVA file for ESXiをダウンロードする
ダウンロードが完了したことを確認します。
ESXiホストから仮想マシン作成する際に、[OVFファイルまたはOVAファイルから仮想マシンをデプロイ]を選択し。[次へ]をクリックします。
仮想マシン名を入力し、ダウンロードしたMoveのOVAファイルを選択して、[次へ]をクリックします。
仮想マシンをデプロイするストレージを選択します。
ネットワーク、ディスクモードなどは環境に適したものを選択します。
内容を確認し、[完了]をクリックします。
仮想マシンがデプロイされたことを確認し、起動します。
しばらくするとログインを求められるため、[User名]、[Password]を入力しログインします。
Move OVAの場合、下記の情報でログインできます。
- User名:admin
- Password:nutanix/4u
ログイン後、パスワードの変更を求めたれるため、任意のパスワードを設定します。
「Do you want to configure static IPv4 address? [y/N]」と問われるため、[y]を入力し、以下の項目を設定をします。
- IPアドレス
- サブネットマスク
- デフォルトゲートウェイ
- DNSserver Primary
- DNSserve secondary
- my.dc.domain
下図のように「Static IPv4 configuration completed successfully」と表示された事を確認します。
Webブラウザに先ほど設定したMoveのIPを入力してアクセスし、[I have read and agree to terms and conditions]にチェックし、[Continue]をクリックします。
画面が切り替わるため、Moveの新しいパスワードを入力しログインします。
※ MoveのWeb UIでログインするデフォルトユーザーは「nutanix」となるため、初回ログイン時は再度パスワード変更が求められます。
Nutanix Moveの設定
移行元ESXi環境の設定
ログインすると以下のような画面になるため、[×]をクリックして閉じます。
Select Migration Typeに[VM]にチェックを入れ、[Continue]をクリックします。
[+Add Environment ]-[Select Environment Type]から[VMware ESXi]を指定します。
以下の項目を入力し、[Add]をクリックします。
- Environment Name
- vCenter Server or standalone ESXi hostのIPアドレス
- User Name
- Password
[Environment]が追加されていることを確認します。
移行先環境の追加
再度、同じ手順で[Environment]の追加を行います。次は移行先の環境(AOS)の追加となります。
以下の項目を入力し、[Add]をクリックします。
- Environment Name
- vCenter Server or standalone ESX hostのIPアドレス
- User Name
- Password
[Environment]が追加されていることを確認し、[Create a Migration Plan]をクリックします。
[Plan Name]を入力し、[Proceed]をクリックします。
移行する仮想マシンを選択し、[Next]をクリックします。
※ 移行対象のVMにVMware Toolsがインストールされていない場合、移行中のチェックポイントでエラーが出ます
Target Networkから移行先のNetworkを選択し、[Next]をクリックします。
下記の項目を入力し[Next]をクリックします。
- Preparation Mode→Automatic(デフォルト)
- Guest Operations
- チェックあり:Retain static IP addresses from source VMs(デフォルト)
- チェックあり:Uninstall Vmware tools on target VMs(デフォルト)
- チェックなし:Bypass guest operations on source VMs
- Credentials for Source VMs
- Windows VMsの場合
- Username:Administrator
- Password:xxxxxxxx
- Linux VMsの場合
- Username:root
- Password:xxxxxxxx
- Windows VMsの場合
下記の項目を入力し、[Next]をクリックします。
- VMs Priority
- Medium
- Timezone
- Default
- チェックあり:Retain MAC addresses from the source VMs
- チェックなし:Skip CDROM addition on target VMs
- チェックなし:Enable Memory Overcommit
- VM Migration Type
- チェックあり:Configure Target VM Properties
- チェックなし:Retain Source VM Properties
問題がなければ[Save and Start]をクリックします。
しばらくすると移行が開始されます。
移行が完了後、カットオーバーの操作を行うことで移行後の環境が利用できるようになります。カットオーバーの準備が出来ましたら、以下の画面から[Cutover]をクリックします。
画面が変わるため、[Continue]をクリックします。Migration StatusがCompletedになった事を確認します。
Prismにアクセスし、仮想マシンが移行され、起動されていることを確認します。
結果まとめ
移行時の準備
- 移行元のVMに電源を入れておく
- 移行元のVMにVMWareToolsをインストールしておく
- 移行対象のWindowsのUACを無効化している必要がある
- セキュアブートを無効化しておく
- 同じVMを移行させる際はMACアドレスが被るため片方のVMを削除するかNetworkの接続を外す必要がある
仮想マシンの移行
- 単体でも複数の仮想マシンでも移行が可
- Windows、Linuxの混在での移行も可能
- VMのネットワークはVMXNET3、e1000どちらでも移行が可能
- 仮想マシンアダプターはNutanix Virtual Adapterとして認識される
- Nutanix Moveで移行する際はMACAdressもIPAddressも引き継いで移行される
- [CentOS8]移行先でのping疎通OK、ssh接続OK
- [Wimdows2022]移行先でのping疎通OK、リモートデスクトップ接続OK
- [ubuntu client 20.04]移行先でのping疎通OK、ssh接続OK
- [ubuntu server 20.04]移行先でのping疎通OK、ssh接続OK
最後に
Nutanix CE でのNutanix Moveのインストール、設定手順は以上となります。
ESXiからNutanixへ仮想マシンを移行させる際は、VNware Toolsのインストールをしておくことが必須となるため、移行前に確認しておきましょう。
次回は、Prism Centralをインストールし、Flowの利用方法をご紹介したいと思います。
濱本 夢人(日本ビジネスシステムズ株式会社)
クラウドソリューション本部所属。主にHCI製品(Azure Stack HCI、Nutanix、vSAN etc)、仮想基盤、Switchの構築を担当しています。趣味はラーメン、つけ麺巡りです。
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