NSX-V から NSX-T への移行方法と主なメリット / デメリット

vSphere基盤のネットワークとセキュリティを仮想化するソリューションである VMware NSX ですが、多くの場合、以下の3製品のいずれかをお使いかと思います。

  1. VMware NSX Data Center for vSphere ( NSX-V )
  2. VMware NSX-T Data Center ( NSX-T ) 
  3. VMware NSX ( NSX-T*1 )

このうち NSX-V およびバージョン 3.1 以前の NSX-T はジェネラルサポートが終了しており、環境によっては延長サポートまたはサポート切れの状態で稼働している場合があり、早期の移行が望ましいかと思います。

本記事では、MSX-V から NSX-T への移行について、代表的な方法と主なメリット / デメリットをご紹介していきます。

Migration Cordinator を使用

NSX-T に組み込まれている自動移行ツールである Migration Cordinator により、インプレース ( 同じハードウェア内 ) で NSX-V 環境を NSX-T 環境へ置き換えます。

主なメリット

  • 新規ハードウェアの購入や準備が不要
  • NSX ネットワーク構成の自動移行が可能 *2

主なデメリット

  • 未解決の問題やエラー、アラートが無い等の前提条件のクリアが必要
  • NSX-T 用の NSX Manager を同じハードウェア上に新規にデプロイする必要があり、移行完了までは NSX-V とNSX-T それぞれのコンポーネントが稼働するため、リソースに余裕が必要
  • NSX Edge の移行時に North - South の通信切断、ESXi ホストの移行時に East - West の通信切断が発生する
  • 移行の各ステップがあるが、自動ロールバックが不可能なステップが存在する

並行稼働

新規にハードウェアを準備し、新規 NSX-T 環境を構築し、仮想マシンを既存 NSX-V 環境から vMotion で移動もしくは新規構築することで移行を実現します。

主なメリット

  • 既存 NSX-V 環境へ加える変更が少ないことと、NSX-T 環境は新規の別環境となることから、NSX-T 環境側で構築トラブル等が発生しても既存本番環境への影響が少ない
  • 仮想マシンを既存 NSX-V 環境から新規 NSX-T 環境へvMotionで移動させる場合、East-West の通信では vMotion に伴う瞬断以外の通信切断が発生しない

主なデメリット

  • NSX-T の各コンポーネントと、既存 NSX-V 環境上にあった仮想マシンが稼働できるだけのリソースを持ったハードウェアが新規に必要
  • 仮想マシンの移行に vMotion を用いる場合、既存・新規環境間で互換性が必要
    • 既存 NSX-V 環境の vCenter や ESXi のバージョンが古く新規 NSX-T 環境との vMotion の互換性が無い場合は、バージョンアップが必要
  • 既存・新規どちらの環境でもオーバーレイを使用し、移行完了まで両環境上のVM同士の通信疎通が必要な場合は、Bridge を用いた L2 延伸が必要

リフト アンド シフト

既存 NSX-V 環境から ESXi ホストを切り出して新規 NSX-T 環境を構築し、ESXi ホストおよび仮想マシンを順次新規環境へ移行します。移行期間中は、並行稼働の方法を取った場合と同様の構成となります。

主なメリット

  • 既存 NSX-V 環境のハードウェアを新規 NSX-T 環境に利用できる

主なデメリット

  • 既存 NSX-V 環境から ESXi ホストを切り出す際、該当のホストからVMを移動させる必要があるため、既存 NSX-V 環境のリソースの使用状況によってはリソースが逼迫またはホストの切り出しが出来ない場合がある
  • 既存・新規両環境のリソースおよび耐障害性を確保しながら移行を順次進めていくため、移行スケジュールが複雑かつ長期に渡る形となる
    • 既存 NSX-V 環境を vSAN や Nutanix などの HCI 技術を用いて構築していた場合は特に注意が必要

おわりに

サポート切れのプロダクトの使用を続けることは好ましくなく、また、サポート期間が残っている場合でも実際の移行には時間を要します。

そのため、早期に移行計画を立てることが望ましいですが、NSX-V から NSX-T への移行についてはアーキテクチャやコンポーネントが異なるため、移行方法や移行計画の充分な検討と準備が必要となります。

今回は移行方法の大まかな概要のご紹介となりますが、移行をこれから検討される場合に一助となれば幸いです。

*1:アーキテクチャがNSX-T 3.xとほぼ変わらず、バージョン 4.0以降がこの製品名となっているため、本記事ではNSX-Tとして扱います。

*2:いくつかの移行パターンが用意されていますが、パターンに合致せず移行できないケースもあります。

執筆担当者プロフィール
猪原 泰之

猪原 泰之(日本ビジネスシステムズ株式会社)

主にVMware製品、特にNSX関連を弄っているエンジニア

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