vDS環境のvCenterアップデート手順紹介(3)

全ネットワークがvSphere Distributed Switch(vDS)で管理されている環境におけるvCenterアップデートについて、数回に分けて記載しています。

本記事では、初回に紹介したアップデート方法のうち2つ目の「vSS(標準仮想スイッチ)のポートグループを使用する方法」の手順と流れを記載します。

※vDS環境におけるvCenterアップデートの注意点と事前準備までを記載した第1回記事は下記です。

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※vDS環境におけるvCenterアップデート方法のうち1つ目の「短期ポートバインドの分散ポートグループを使用する方法」の手順と流れを紹介した第2回記事は下記です。

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アップデート前作業

バックアップ取得

これまでの記事でも述べましたが、アップデートに入る前にvCenter仮想マシンのスナップショット取得とvDSのバックアップ取得を行いましょう。

アップデート用ネットワーク設定

管理用vDSの片系vmnic一時解除

後続で作成するアップデート用の標準仮想スイッチに、管理用ネットワークのvmnicを割り当てるため、一時的に管理用vDSのvmnicを片方取り外します。

対象は、既存vCSAが配置されているホストです。

  1. vSphereClientで既存vCSAが配置されているホストを選択し、[設定]>[仮想スイッチ]>[管理用vDS]を展開して、[物理アダプタの管理]をクリックします。

  2. アップリンクポートから、管理ネットワークに使用されているvmnicのうち片方を選択して、[×]をクリックします。

  3. 割り当てが削除されたことを確認して[OK]をクリックします。

  4. 割り当てが削除されていることが確認できます。また、冗長性が失われたことによりエラー状態となりアラートが検知されます。
    ※アップデート完了後、元に戻すまではこの状態を許容する必要があります。

アップデート用vSS・ポートグループの作成

アップデートに使用するvSSとポートグループを作成します。作成先は既存vCSAが配置されているホスト上に作成しましょう。

  1. vSphereClientで既存vCSAが配置されているホストを選択し、[設定]>[仮想スイッチ]画面で[ネットワークの追加]をクリックします。

  2. [接続タイプの選択]画面にて[標準スイッチの仮想マシンのポートグループ]を選択して[NEXT]をクリックします。

  3. [ターゲットデバイスの選択]画面にて「新しい標準スイッチ:MTU[9000]」を設定し[NEXT]をクリックします。

  4. [標準スイッチの作成]画面にて[+]をクリックし、取り外したvmnicを選択して[OK]をクリックします。

  5. [接続設定]画面にて、ラベル名とVLANを以下パラメータに設定して[NEXT]をクリックします。 
    ・ネットワークラベル:任意のポートグループ名を設定
    ・VLAN:既存vCSAのポートグループと通信可能なVLAN値を設定

  6. [設定の確認]ページにて、設定に間違いがないことを確認して[FINISH]をクリックします。

  7. [設定]>[仮想スイッチ]画面にて、アップデート用のvSSとポートグループが作成されたことを確認します。

アップデート

アップデートの流れは、前回記事の「短期ポートバインドの分散ポートグループを使用する方法」の際と変わりありません。

ステージ1 - OVAのデプロイ

  1. インストーラISOファイルをマウントして[\vcsa-ui-insaller\win32]内のinstaller.exeを実行します。

  2. 日本語表記に変更して、[アップグレード]をクリックします。
    ※日本語表記にすることは必須ではありません。

  3. [次へ]をクリックします。

  4. [使用許諾契約書の条項に同意します]にチェックを付けて[次へ]をクリックします。

  5. ソースとなる既存vCSAのFQDNもしくはIPアドレスを入力して[ソースに接続]をクリックします。

  6. SSO管理者ユーザー名、パスワード、既存vCSAのrootパスワードを入力します。

  7. ソースとなる既存vCSAが配置されているESXiホストのFQDNもしくはIPアドレス、ユーザー名(root)、パスワードを入力して[次へ]をクリックします。

  8. [証明書に関する警告]が出ますが、[はい]をクリックして次へ進みます。

  9. アップデート後の新規vCSAを配置するESXiホストのFQDNもしくはIPアドレス、ユーザー名(root)、パスワードを入力して[次へ]をクリックします。
    ※本記事の方法では、配置するホストはアップデート用のvSS・ポートグループを作成したホスト(既存vCSAと同じホスト)である必要があります。
  10. 再度[証明書に関する警告]が出ますが、[はい]をクリックして次へ進みます。

  11. 新規vCSAの仮想マシン名とrootパスワードを入力して[次へ]をクリックします。
    ※前回記事でも述べましたが、この時は既存vCSA仮想マシン名と異なる名前の指定が必要となります。名前変更が可能なタイミングはアップデート完了後です。
    ※rootパスワードはアップデートの引き継ぎ対象外のため、既存と同様にしたい場合は同じものを入力するようにしてください。

  12. 新規vCSAのデプロイサイズを指定して[次へ]をクリックします。

  13. 新規vCSAのデプロイ先データストアを選択します。必要に応じて[シンディスクモードの有効化]にチェックを付けて[次へ]をクリックします。

  14. 新規vCSAのネットワーク情報を入力して[次へ]をクリックします。デプロイ先ネットワークの中に事前作成したアップデート用のvSS上のポートグループが出てくることが確認できるかと思いますので、こちらを選択しましょう。
    ※ 一時IPアドレスは、アップデート処理中に一時的に使用されるもので、最終的にIPアドレスは既存vCSAのものが引き継がれます。既存vCSAと通信可能な同一サブネットの重複しない任意のIPアドレスを指定しましょう。

  15. 設定内容に間違いがないことを確認して[完了]をクリックします。

  16. アップグレード-ステージ1の処理が開始されるので、終わるまで待機します。

  17. 正常に完了したことを確認して、ステージ2へ進むため[続行]をクリックします。

ステージ2 - アプライアンスのセットアップ

  1. [次へ]をクリックします。

  2. アップグレードの事前チェックが始まりますので、終わるまで待ちます。

  3. チェックが終了すると結果が表示されます。vSphereバージョン7以上になることによる仕様変更の注意点に関する記載が出てきますが、一読して問題がなければ[閉じる]をクリックします。エラーがあった場合は内容を確認して対処後に再度事前チェックを実施しましょう。

  4. ソースの既存vCSAから新規vCSAに移行するデータの種類を選択して[次へ]をクリックします。基本的にはすべてのデータ(構成、インベントリ、タスク、イベント、およびパフォーマンスメトリック)を選択する形で良いかと思います。

  5. [VMware カスタマエクスペリエンス向上プログラム(CEIP)に参加する]のチェックは任意です。今回はチェックを外して[次へ]をクリックします。

  6. 設定内容に間違いがないことを確認して、[ソースvCenter Server および必要なすべてのデータをデータベースからバックアップしました。]にチェックをつけて[完了]をクリックします。

  7. 警告画面が出ますが、[OK]をクリックします。

  8. ステージ2の処理が開始されるので、完了するまで待ちます。

  9. 完了するとvSphere7の仕様に関するメッセージが表示されますので内容を確認して[閉じる]をクリックします。

  10. 完了画面が出ますので[閉じる]をクリックします。

  11. vSphere Client、vCenter管理インターフェースにログインしてバージョンが想定通りに上がっていることを確認します。※画像は管理インターフェースのもの

アップデート後作業

新規vCSAのポートグループ付け替え

本アップデート手順実施後の状態では、新規vCSAに割り当たっているポートグループはアップデート用に作成したvSS上のポートグループになっています。それを、旧vCSAと同じvDS上のポートグループに変更する必要があります。

※変更手順は前回記事と同様です。

  1. 新規vCSAを右クリックし[アクション]>[設定の編集]を選択します。
  2. ネットワークアダプタのポートグループ名プルダウンを選択します。
    ※現時点ではアップデート用のポートグループ名が表示されています。

  3. 旧vCSAで使用していたポートグループを選択して、[OK]をクリックします。

ネットワーク設定のリストア

アップデート用のvSSの削除、管理用vDSから取り外していたvmnicの再割り当てを行い、ネットワーク設定を元の状態に戻しましょう。

アップデート用vSSの削除
  1. vSphereClientで対象ホストを選択し、[構成]>[仮想スイッチ]画面でアップデート用に作成したvSSを展開して[…]>[削除]をクリックします。

  2. 削除の確認画面で対象に間違いがないことを確認して[はい]をクリックします。

管理用vDSのvmnic再割り当て
  1. vSphere Clientで対象ホストを選択し、[構成]>[仮想スイッチ]>[管理用vDS]を展開して、[物理アダプタの管理]をクリックします。

  2. アップデート用で一時的に取り外していたアップリンクを選択して[+]をクリックします。

  3. アップデート用で一時的に取り外していたvmnicが表示されるので、選択して[OK]をクリックします。

  4. vmnicの割り当てに間違いがないことを確認して[OK]をクリックします。

  5. 元の設定どおりであることが確認できます。また、一時的に出ていた冗長性のアラートも解消されます。※エラー状態の解消に時間がかかることもありますが、アップリンクしていることが確認できていれば、アラートを手動で緑にリセットしてしまっても問題ありません。

仮想マシン名の変更

前回記事でも述べましたが、アップデート後であれば、新規vCSAの仮想マシン名を名前変更して既存踏襲することが可能です。

変更の際は、はじめに旧vCSAの名前変更をしてから新vCSAの名前変更を行いましょう。

  1. 旧vCSA仮想マシンを右クリックし[名前の変更]を選択して仮想マシン名を変更します(末尾に-oldをつけるなど)

  2. 新vCSA仮想マシンを右クリックし[名前の変更]して仮想マシン名を旧vCSAのものへ変更します。

※ 注意点:仮想マシン名の変更は上記で完了ですが、データストア内のフォルダ名・ファイル名は以前のままになっています。こちらも変更する場合は、Storage vMotionを実施する必要があります。

vCLSリトリートモードの設定

前回記事でも述べましたが、vSphere7以降、vCLSと呼ばれるDRSやHA等の機能を担う仮想マシンが自動作成されるようになりました。

こちらは削除や停止をかけても自動復旧するため、メンテナンスなどでホスト全停止の際は、Retreatモードに設定してvCLSを無効にする必要があります。事前に設定を入れておくことで運用上便利になるかと思います。

Retreatモードの設定方法については下記サイトを参照してください。

[GS Newsletter] vSphere クラスタ サービス (vCLS) の「Retreat モード」設定方法 - VMware Japan Blog

ライセンス適用

これまでの記事でも述べたように、アップデート後はライセンスが評価版となります。

評価版の期限は60日間ですので、それまでにvSphere7用のライセンスを準備して適用しましょう。

おわりに

本記事では、全ネットワークがvDSで管理されている環境におけるvCenterアップデートについて、紹介したアップデート方法のうち2つ目の「vSS(標準仮想スイッチ)のポートグループを使用する方法」の手順と流れを紹介しました。

こちらの方法を使用した実際のアップデート手順と流れについて、イメージする参考となれば幸いです。

今回で、全ネットワークがvDSで管理されている環境におけるvCenterアップデートについての記事は終了となります。3つの記事の内容が、皆様の作業や勉強の手助けとなれば幸いに思います。ご覧いただきありがとうございました!

執筆担当者プロフィール
清田 一輝

清田 一輝(日本ビジネスシステムズ株式会社)

ハイブリッドクラウド部に所属しています。主にサーバ・ネットワークスイッチなどオンプレミス環境の導入作業に携わっています。

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