Azure Virtual Desktop(以下AVD)に接続する際には、クライアントアプリを使う方法が一般的かと思います。
2023年にMicrosoft よりAVD用URIスキームが一般公開され、そのURI(≒URL)を用いてショートカットでAVDに接続できるようになりました!
今回はそのURIの作成方法、ショートカットを用いてのAVDへの接続方法についてご紹介したいと思います。
※記載の内容は執筆時点の公開情報を元にしております。
URIスキームとは
まず、今回メインとなるURIスキームとは何かについて紹介していきます。
URIスキームとは、URIおよびURLの先頭部分にあたる、通信手段を示す情報です。
Webアクセスで使われるhttpまたはhttpsは見慣れているのではないでしょうか。
URIやURLの詳細やそれぞれの違いについては割愛しますが、今回扱う内容ではURI≒URLだと思ってください。
そしてMicrosoftより一般公開されたのは「ms-avd」というAVD用URIスキームです。
URIスキームを使ってAVDに接続するURIを作成し、そのURIをもとにデスクトップ上にショートカットを作成します。
URIを作成する前に、一般的なAVDへの接続方法とショートカットを利用した場合での接続の流れの違いを紹介したいと思います。
AVD接続の流れの違い
ショートカットを利用することによる、AVD接続の流れの違いを紹介したいと思います。
まず前提として、どちらの場合もクライアントアプリというアプリケーションが必要になります。
アプリケーションは無料で、以下リンクのMicrosoftのドキュメントからインストールできます。
接続方法の違いは以下になります。
図からわかるように、ショートカットを利用すると、接続の手順に加え時間の短縮もできます。
また、デスクトップにショートカットを配置するため、ショートカットの名前を変更したり配置場所を変えることで、ユーザーからみて自分の利用するAVDがわかりやすいというメリットもあります。
デメリットしては、この後ご紹介するURIの作成が必要になる事と、各ユーザーのPCへのショートカット配置の手間があります。
対象の環境が大規模環境なのか、小規模なのか、また、利用するユーザーのAVD環境への知識など、様々な要素と組み合わせてショートカットを検討してください。
AVD用ショートカットの作成方法
AVD用ショートカットの作成方法について紹介していきます。
今回はAVD環境が構築済みであることを前提として、URI作成の以下3つの手順のみ記載します。
- 各IDの取得
- URIの作成
- ショートカットの作成と配置
- クライアントアプリのインストールと登録
AVD環境の構築や利用に関する前提条件、構成や作成するリソースについては、同シリーズの下記記事を参照ください。
【AVD 虎の巻】第3回 Azure Virtual Desktopの構成 - JBS Tech Blog
手順に入る前に、大まかな流れを紹介します。
AVD用URIは、AVD環境の各IDを取得して、テンプレートに合わせて組み合わせることで作成できます。
テンプレートの各要素の詳細は以下です。
- URIスキーム:
- AVDリソースを検索し、指定したユーザーをそのリソース(セッションホスト)に接続します
- ワークスペースのオブジェクトID:
- 接続するAVDが紐づいているワークスペースのIDです
- アプリケーショングループのリソースID:
- 接続するAVDが紐づいているアプリケーショングループのIDです
- AVD利用ユーザー:
- AVD利用ユーザーのEntra IDのユーザー名です
- URIスキームのバージョン:
- 利用するURIスキームのバージョンの指定です
- 現在はバージョンが出ていないので、どの環境も共通で0を入れます
各要素のうち、2と3のIDはAzureポータルのGUI上では確認できないため、PowerShellコマンドで取得する必要があります。
それでは、次から各IDを実際に取得していきます。
各IDの取得
AVD環境に接続するために必要な以下2つのIDを取得します。
- ワークスペースのオブジェクトID
- アプリケーショングループのリソースID
1. Azure(インターネット)へ通信できる作業用端末を準備し、Power Shellを起動します。
2. 以下コマンドを順に実行し、Az PowerShellモジュールをインストールします。
Install-Module -Name PowerShellGet -Force
Get-ExecutionPolicy -List
Set-ExecutionPolicy -ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope CurrentUser
Install-Module -Name Az -Repository PSGallery -Force
Update-Module -Name Az -Force
インストールの前提条件や詳細な方法は以下情報を参考にしてください。
Windows に Azure PowerShell をインストールする | Microsoft Learn
コマンドや環境によっては、プロバイダーの確認が表示される場合があるので、必要に応じて回答し、コマンドの実行を進めてください。
3. 以下コマンドを実行して、Azure環境に接続します。
Connect-AzAccount -SubscriptionId 'yyyy-yyyy-yyyy-yyyy'
'yyyy-yyyy-yyyy-yyyy'の部分には、URIで接続するAVD環境のサブスクリプションIDをAzureポータルより確認し、入力してください。
サインインするためのポップアップが表示されるので、指示に従いサインインを実施してください。
接続完了すると以下のような出力が表示されます。
4. 以下コマンドを実行して、ワークスペースのオブジェクトIDを取得します。
(Get-AzWvdWorkspace -Name xxxxx -ResourceGroupName yyyyy).ObjectID
xxxxx、yyyyyの部分にはそれぞれ以下を入力してください。
- xxxxx:URIで接続するAVD環境のワークスペース名
- yyyyy:xxxxxで指定したワークスペースが格納されているリソースグループ名
コマンド実行が完了すると、32桁の英数字の出力が表示されます。
5. 以下コマンドを実行して、アプリケーショングループのリソースIDを取得します。
(Get-AzWvdDesktop -ApplicationGroupName xxxxx -ResourceGroupName yyyyy -Name SessionDesktop).ObjectID
xxxxx、yyyyyの部分にはそれぞれ以下を入力してください。
- xxxxx:URIで接続するAVD環境のアプリケーショングループ名
- yyyyy:xxxxxで指定したアプリケーショングループが格納されているリソースグループ名
コマンド実行が完了すると、32桁の英数字の出力が表示されます。
各ID取得の手順は以上になります。
URIの作成
取得した各IDをテンプレートに合わせて組み合わせ、AVDに接続できるURIを作成していきます。
テンプレートは以下です。
ms-avd:connect?workspaceId=xxxxx&resourceid=xxxxx&username=xxx@example.com&version=0
1. 取得したそれぞれのIDを赤字部分に入力します。
2. AVDに接続するユーザー名を青字部分に入力します。
URI作成の手順は以上になります。
ショートカットの作成と配置
作成したURIを使ってショートカットの作成とデスクトップへの配置をします。
1. デスクトップ画面上の適当な場所で右クリックし、[新規作成]-[ショートカット]をクリックします。
2. [項目の場所を入力してください]に、作成したURIを入力し、[次へ]をクリックします。
3. [このショートカットの名前を入力してください]に、ショートカット名を入れます。
※ この名前はデスクトップに表示される名前なので、AVDなどわかりやすい名前がおすすめです。
4. [完了]をクリックします。
5. デスクトップ画面にショートカットが作成されることを確認します。
ショートカットのアイコンは、既定でクライアントアプリのアイコンになります。
クライアントアプリのインストールと登録
※ この章の内容は、すでにクライアントアプリを使ってAVDを利用している方は不要です。その場合は「実際の接続の流れ」の章までスキップしてください
冒頭の[AVD接続の流れの違い]でも話に出ましたが、AVDの接続にはクライアントアプリが必要です。
本記事では、ショートカットを利用することでクライアントアプリの起動とAVDの選択を省略していました。
ただ、ショートカットを利用している場合でも、起動していないものの裏ではクライアントアプリが動いている、という仕組みです。
そのため、利用開始する前にクライアントアプリのインストールと、アプリへのユーザー登録が必要になります。
1. クライアントアプリをインストールします。
以下リンクのMicrosoftのドキュメントを参考に、Windows 用リモート デスクトップ クライアント (MSI) のWindows 64ビットをインストールしてください。
詳細な手順は先ほどのリンク先に記載されているため、ここでは割愛します。
2.クライアントアプリを起動し、[登録]をクリックします。
3. サインイン画面でAVDに接続するユーザー名を入力し、サインインします。
※ ここで入力するユーザー名は[URIの作成]でURIに入れたユーザー名です。
この後に続くパスワード認証や多要素認証の画面は環境により異なるため、省略します。
4. ユーザー登録が完了し、接続するAVDのアプリケーション名とアイコンが表示されることを確認します。
AVD用ショートカットの作成方法は以上になります。
最後に、実際にAVD用ショートカットの利用方法と注意事項についてご紹介します。
実際の接続の流れ
実際にAVDに接続してみましょう。
1. デスクトップ画面のショートカットをダブルクリックします。
2. サインインのポップアップが表示されたら、パスワードを入力し、[OK]をクリックします。
3. AVDに接続し、デスクトップ画面が表示されます。
接続までのスピード感が早く、一度作成してしまえば利便性が高いように感じます。
接続までの時間としては、AVDの仮想マシンが起動している場合は1分以内、停止状態の場合は起動時間も含めて3分程度要します。
おわりに
今回は、ショートカットでのAVDへの接続について紹介させていただきました。
大規模環境ではURIの作成とショートカット配置の手間がかかりますが、検証環境や小規模な環境では接続までのユーザビリティの向上になるのではと思います。
自身の環境がある方はぜひお試ししてみてほしいです。
ご覧いただきありがとうございました。
山﨑 日南子(日本ビジネスシステムズ株式会社)
ハイブリッドクラウド部門に所属。主にAzure(IaaS)製品、VDIソリューション(Azure Virtual Desktop)の設計、構築に携わっています。
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