【AVD 虎の巻】第7回 AVDのアプリケーション配信

Azure Virtual Desktop(以下AVD)というと、デスクトップ画面を配信する、というイメージが強いのではないでしょうか。

実は、AVDには配信方法が2種類あり、デスクトップ配信だけではなく、アプリケーション配信という方法もあります。

今回はアプリケーション配信に焦点を当てて、構築方法や注意事項をいくつかご紹介したいと思います。

※記載の内容は執筆時点の公開情報を元にしております。

デスクトップ配信とアプリケーション配信の違い

冒頭で少し触れたように、AVDにはデスクトップ配信とアプリケーション配信の2つの配信方式があります。

まずは、2つの配信方式の違いについて簡単に紹介していきます。

デスクトップ配信

デスクトップ配信は、名前の通りデスクトップ画面を配信するものです。PCのデスクトップ画面をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

通常のPCでの操作のように、スタートメニューやブラウザ操作、インストールされているアプリなどを自由に操作することができます。

デスクトップ配信は、シングルセッション/マルチセッション共に利用可能です。

アプリケーション配信

アプリケーション配信は、アプリケーション単体を配信するものです。スマートフォンのアプリをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

アプリケーション毎にセッションが切り離されているため、利用する際はそれぞれのアプリに接続する必要があります。

アプリケーション配信は、マルチセッションでのみ利用可能です。

デスクトップ配信とアプリケーション配信の違いまとめ

2つの配信方法を簡単に図にまとめました。

他にも細かいそれぞれの特徴や違いはありますが、今回は割愛します。

アプリケーション配信の構築方法

アプリケーション配信の構築方法について紹介していきます。

AVD環境全体の構築方法をご紹介となると長くなってしまうため、今回はアプリケーション配信の際に通常のAVD構築方法に追加で実施する、以下2つの手順のみ記載します。

  1. マスターイメージの作成
  2. アプリケーショングループの作成

AVD環境の構築/利用に関する前提条件、構成や作成するリソースについては、同シリーズの下記記事をそれぞれ参照ください。

マスターイメージの作成

AVDセッションホストの基となる、OSのマスターイメージを作成します。

通常のAVDでも必須となる手順ですが、アプリケーション配信では、配信したいアプリケーションをインストールしておく必要があります。

アプリによっては、通常のPCへのインストール方法ではなく、VDI用のインストール方法でのインストールが必要な場合があるため、各アプリケーションのサイトを確認する必要があります。

参考までに、アプリケーション配信でインストールされることが多いアプリケーションは以下となります。

  • Microsoft 365 アプリ*1
  • Microsoft Edge*2
  • Google Chrome
  • Adobe Acrobat Reader DC
アプリケーショングループの作成

アプリケーション配信用のアプリケーショングループを作成します。

アプリケーショングループとは、アプリケーション(デスクトップ/アプリケーション)と、利用するユーザーを管理するリソースです。

デスクトップ配信とアプリケーション配信は配信方法が異なるため、それぞれ別のアプリケーショングループを作成する必要があります。

AVDを構築する際に必須であるホストプール作成時に、デスクトップ配信用のアプリケーショングループは自動で作成されます

今回は、アプリケーション配信用のアプリケーショングループを、作成済みのホストプールに追加する手順を紹介します。

1. ホストプールのリソースページよりアプリケーショングループを開き、[追加]をクリックします。

2. [基本]タブにて、作成するアプリケーショングループ名を入力します。

※[アプリケーショングループの種類]の[RemoteApp]がアプリケーション配信を指します。
※1つのホストプールに対してデスクトップ配信用のアプリケーショングループは1つしか作成できないため、自動でグレーアウトされます。

3. [アプリケーション]タブにて、[アプリケーションの追加]をクリックします。

4. [基本]タブの[アプリケーションリソース]は既定の[スタートメニュー]のまま、[アプリケーション]にて配信するアプリケーションを選択します。マスターイメージにインストールされているアプリがプルダウンで表示されます。

※画像はExcelを選択しています
※[表示名]はAVD接続時のクライアントアプリ上の表示名となります

5. [アイコン]タブは既定のまま、[確認+作成]タブで設定値を確認し、[追加]をクリックします。

6. [割り当て]、[ワークスペース]タブに設定値を入力し、アプリケーショングループを作成します。[割り当て]タブは割り当てるユーザーまたはグループの指定、[ワークスペース]は、割り当てるアプリケーショングループの指定を実施します。

アプリケーション配信用のアプリケーショングループの作成と、接続するユーザーまたはグループの割り当てが完了すれば、構築は完了です。

AVDを構築したことがある方であれば、そこまで難しい手順ではないと思います。

アプリケーション配信構築時の注意点

アプリケーション配信を構築・利用する際の注意点について紹介していきます。

アプリケーション配信が非サポートのアプリ

全てのアプリケーションが、アプリケーション配信で配信できるというわけではありません。

マスターイメージへのインストールやアプリケーショングループへの追加ができても、アプリケーションの提供元が非サポートとしている場合もあります。

多くはありませんが、私が検証した中ではZoomが非サポートとされていました。

support.zoom.com

アプリケーション配信を実装する際には、対象のアプリケーションがVDI対応であるかアプリケーション配信対応なのかの2点を確認するようにしてください。

スタートアップ設定の無効化

通常のPCやAVDのデスクトップ配信では、便宜性を高めるため、利用頻度の高いアプリケーションのスタートアップ設定を有効化している場合があります。

アプリケーション配信のマスターイメージ作成時にスタートアップ設定が有効化されているアプリケーションがあると、他のアプリケーション接続時に自動で起動してしまうことがあります。

Teamsなどのコミュニケーションツールは、インストール時に既定でスタートアップ設定が有効になってる場合があります。

そのため、アプリケーション配信においてスタートアップさせる必要がない場合は、マスターイメージ作成時に明示的にアプリケーションのスタートアップ設定を無効化しておく必要があります。*3

切断状態の設定

アプリケーション配信を終了する際には、通常のアプリケーション同様にアプリの右上の×ボタンでアプリケーションを閉じます。

ところが、画面上は終了できているように見えますが、AVDとしてみると切断状態というセッション状態になり、ユーザーセッションが残り続ける形となります。

切断状態によりユーザーセッションが残り続けると、仮想マシンの割当解除ができず、継続して課金が発生してしまいます。

そのため、以下2つの方法でユーザーセッションが残り続けるのを回避する必要があります。

  • Active Directoryのグループポリシーやマスターイメージのローカルグループポリシーにて、[セッションの制限時間]を設定

  • AVDの電源管理リソースのスケーリングプランにて、ランプダウンの時間帯の[VMを停止するタイミング]で[VMにはアクティブなセッションがありません]を設定

※詳細な設定方法については今回は割愛します。

おまけ:指定のWebページを配信する方法

会社の貸与PCなどの場合、Microsoft EdgeやGoogle Chrome等のブラウザアプリを開いくと、指定のWebページを自動的に起動する設定が入っている場合も多いのではないでしょうか。

アプリケーション配信でも同様の設定が可能です!

設定方法は難しくありません。前述のアプリケーショングループへのアプリケーション追加時に、以下2点を指定するだけです。

  • [アプリケーション]でブラウザアプリ(Microsoft Edge/Google Chrome等)を指定
  • [コマンドラインが必要]で[はい]を選択し、[コマンドライン]に設定したいURLを入力

注意点としては、1つのアプリケーショングループに同じアプリケーションを複数追加することはできないため、ブラウザアプリを複数配信することはできません。

そのため、複数のWebページを配信したい場合は、配信したいWebページの数の分のアプリケーショングループを作成し、それぞれでブラウザアプリを配信する必要があります。

おわりに

今回は、AVDのアプリケーション配信について紹介させていただきました。

アプリケーション配信は、特定のバージョンのアプリを業務で利用したい場合や、多くのユーザーが特定の同じアプリを利用する場合にも活用できます。

構築方法も難しくないので、実際の動作感やデスクトップ配信との違いをぜひ試していただければと思います。

ご覧いただきありがとうございました。次回の連載も乞うご期待ください!

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*1:Excel/Word/Power Point/Microsoft Teams

*2:Azure Marketplaceから作成するWindowsOSの仮想マシンの場合、Microsoft Edgeは既定でインストールされています。

*3:スタートアップの無効化はアプリケーション配信利用時の便宜上の観点かで行っていますが、無効化しないと動作に不備がでるわけではありません。通常のPCやAVDのデスクトップ配信同様に、スタートアップさせて利用したいアプリがある場合は、有効化設定でも問題ありません。

執筆担当者プロフィール
山﨑 日南子

山﨑 日南子(日本ビジネスシステムズ株式会社)

ハイブリッドクラウド部門に所属。主にAzure(IaaS)製品、VDIソリューション(Azure Virtual Desktop)の設計、構築に携わっています。

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