vDS環境のvCenterアップデート手順紹介(1)

数回に分けて、全ネットワークがvSphere Distributed Switch(vDS)で管理されている環境におけるvCenterアップデートについて記載予定です。

本記事では、vDS環境におけるvCenterアップデートの注意点と事前準備までを記載します。

vDS環境におけるアップデート時の注意点について

vDS環境におけるvCenterアップデートについてこれから紹介していきますが、基本的な流れは、vDS環境でない場合のvCenterアップデートと大差ありません。

ただ、ひとつ気を付けなければならない点が、デプロイネットワーク選択における以下の注意点です。

注:インストーラのドロップダウン メニューに、ターゲット サーバのネットワーク設定に依存するネットワークが表示されます。アプライアンスを ESXi ホストに直接デプロイする場合は、短期のポートバインド以外の設定をしている分散仮想ポート グループはサポートされません。このため、このグループはドロップダウン メニューに表示されません。

引用元:vCenter Server Appliance 6.5 または 6.7 のアップグレードに必要な情報 (vmware.com)

引用した通り、短期ポートバインド以外の分散仮想ポートグループがサポートされていません。

そのため、既存vCenterで使用されているのが静的バインドのポートグループの環境であった場合、下図のように新vCSAのデプロイ時に同じネットワークを選択できない、といった状況が起こりえます。

※使用していないvSS(標準仮想スイッチ)上のポートグループが出てしまって分かりにくいですが、静的バインドのポートグループは出てきません。

今回の環境について

今回紹介するのは、バージョン6.7から7.0へのアップデート手順となります。

弊社検証環境上に立てたNested ESXiサーバで検証しています。

使用したvCenterとESXiバージョンは以下の通りです。

  • vCenter
    • 既存のバージョン:6.7 U1b build 11727113
    • 更新後のバージョン:7.0 U3 build 22357613
  • ESXi
    • 既存のバージョン:ESXi 6.7U1 build 13004448
    • 更新後のバージョン:ESXi 7.0U3o build 22348816

※本記事ではESXiアップデートまでは実施しませんが、アップデート予定のバージョンを記載します。

注意点に対するネットワークの準備対応について

最所に引用した引用した注意点で述べたポートグループの件があるため、アップデートを実施するにあたってネットワーク部分で工夫した準備を行う必要があります。

注意点に対応した方法は2つありますので、それぞれ紹介します。

短期ポートバインドの分散仮想ポートグループを使用する方法

最初に引用した注意点の通り、短期のポートバインド以外の設定をしている分散仮想ポート グループはサポートされません。

つまり、短期ポートバインドの分散仮想ポートグループについてはサポートされています。

そのため、既存vCenterが割り当てられているポートグループと通信可能な、短期ポートバインドの分散仮想ポートグループを作成・使用して、アップデートを実施することができます。

vSS(標準仮想スイッチ)を使用する方法

同上で、vSS(標準仮想スイッチ)のポートグループであればサポートされているため問題なく使用できます。

既存vCenterが配置されているホスト上に新規vSwitchと通信可能なポートグループを作成し、vDSから片系vmnicを一時的に移行します。

この間冗長性は失われてしまいますが、vDSとvSS両方を使用できる状態となるためvSSのポートグループを使用してアップデートを実施することができます。

事前準備

上述のネットワーク準備を除いて、vDS環境におけるvCenterアップデートの事前準備で必要なことは、vDS環境でない場合のvCenterアップデートと同様です。

要件確認

アップデートの要件など事前に確認が必要な事項については、下記のドキュメント「vCenter Server Applianceのアップグレードの準備」を参照して確認しておきましょう。

特に名前解決の正引き逆引き登録などはよく躓く事項ですので、注意が必要です。

vCenter Server Appliance のアップグレードの準備 (vmware.com)

必要なものの準備

下記はアップデートに必要な情報です。

準備に時間がかかる場合も考慮して早めに準備しましょう。

  • vCenterのISOファイル
    • アップデートを行うターゲットバージョンのISOファイル
  • 一時IPアドレス
    • アップデート中の新規vCenterに割り当てられるIPアドレス
    • 既存vCenterと同セグメントのIPアドレスの準備が必要
  • ライセンス
    • アップデートを行うとライセンスが評価版となる
    • vSphere7用のライセンスの準備が必要
  • 仮想マシン名
    • 新規vCenter仮想マシンに割り当てられる仮想マシン名

※アップデート完了後、既存の仮想マシン名に名前変更することも可能ですが、アップデート中は同じ名前に設定できないので、他と被らないものを準備しておきましょう。

スナップショットの取得

アップデートで何かあったときのために、スナップショットを取得しておきましょう。

vDSのバックアップ取得

vCenterアップデート後に自動でvDSがアップデートされるわけではありませんが、念のためvDSのバックアップも取得しておくことをお勧めします。

おわりに

本記事では、全ネットワークがvDSで管理されている環境におけるvCenterアップデートについて、大まかな概要と準備フェーズについて紹介しました。

静的バインドの分散仮想ポートグループが使用できない点が注意点であることわかっていただけたら幸いです。

実際のアップデート手順と流れについては、今後別記事で紹介できればと思いますのでお待ちください。

ご覧いただきありがとうございました!

執筆担当者プロフィール
清田 一輝

清田 一輝(日本ビジネスシステムズ株式会社)

ハイブリッドクラウド部に所属しています。主にサーバ・ネットワークスイッチなどオンプレミス環境の導入作業に携わっています。

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