本記事では、Microsoft Fabricのウェアハウスに格納された売上・在庫・顧客データを活用し、Power BIで分析環境を構築する実践的なステップをご紹介します。
前回は、レポートの作成についてご紹介しました。
【Power BI】データモデル構築からレポート・ダッシュボード作成まで(レポート編) - JBS Tech Blog
今回はダッシュボード編として、主要KPIを集約したダッシュボードの作成方法と、ダッシュボードを起点としたアラート通知による運用自動化を紹介します。
※本記事のデータは、前回用いたダミーデータをそのまま利用しています。
ダッシュボードの概要
Power BI ダッシュボードは、Power BI サービス上で提供される機能で、複数のレポートやセマンティックモデルから重要なビジュアルを集約し、1ページで視覚化できる仕組みです。
レポートが1つのデータセットに基づいて構成されるのに対し、ダッシュボードは複数のデータセットやレポートからタイルを集約できる点が特徴です。各ビジュアルはレポートから「ピン留め」することで追加され、クリックすると元レポートにドリルスルーできます。
なお、ダッシュボードは静的であり、スライサーやフィルター操作はできません。リアルタイム性はデータセットの更新頻度に依存するため、更新スケジュールの設計も重要です。
本シナリオでは、売上と在庫レポートの主要KPIを集約し、経営層や店舗マネージャーが日々の状況を迅速に把握できるダッシュボードを構築します。
ダッシュボードの作成
提供する主要情報
本ダッシュボードでは、以下のビジュアルを各レポートから追加します。
| ビジュアル名 | 対象レポート |
| 前日売上高 | 売上パフォーマンスレポート |
| 前々日売上成長率 | 売上パフォーマンスレポート |
| 今月の累計売上高 | 売上パフォーマンスレポート |
| 今月の売上達成率 | 売上パフォーマンスレポート |
| 今年の売上達成率 | 売上パフォーマンスレポート |
| 大阪支店内 店舗別売上 | 売上パフォーマンスレポート |
| 日次売上トレンド | 売上パフォーマンスレポート |
| 過剰在庫商品数 | 在庫最適化レポート |
| 欠品リスク商品数 | 在庫最適化レポート |
| カテゴリ別販売数量と在庫数量の比較 | 在庫最適化レポート |
ダッシュボードへビジュアルの追加
実際に、Power BIサービス上からビジュアルをダッシュボードに追加する手順について説明します。
作成したレポートから追加するビジュアルを選択し、「ビジュアルをピン留めする」をクリックします。

新規ダッシュボード作成のため「新しいダッシュボード」を選択し、任意のダッシュボード名を付けて「ピン留め」をクリックします。
(既存のダッシュボードにビジュアルを追加する場合は、「既存のダッシュボード」を選択し、対象のダッシュボードをドロップダウンから選択します。)

新規で作成したダッシュボードを確認すると、追加したビジュアルが表示されることを確認できます。

上記の手順で、対象のビジュアルをダッシュボードに追加し、並べ替えたものが以下になります。

アラート
概要
Power BIのアラートは、Power BIサービスのダッシュボードで利用できる機能で、タイル(KPIカードや単一値ビジュアル)に対して指定した条件を満たした場合に通知を行います。設定した閾値を超過または下回ると、メールやモバイルアプリで通知され、異常値を迅速に把握できます。
※ 通知はアラートを設定した本人にのみ届きます。
本記事では、ダッシュボード専用の標準アラートにフォーカスし、レポート内で利用できる「Data Activator」などの高度なアラート機能は対象外とします。
アラートの考慮事項として、以下の制約があります。
- アラートは数値データ型のみ対応し、日付や時刻を含むカードタイルではサポートされません。
- 更新されたデータに対してのみ機能し、静的データでは動作しません。
- 値が変更された場合のみ通知され、同じ値に対する重複通知はありません。
- KPI、カード、ゲージビジュアルをピン留めした場合、アラートはストリーミングデータセットでのみ動作します。
- ユーザーは、最大250件のアラートを作成可能です。
- 共同所有権は非対応であり、所有権の譲渡やPower Automate連携時には、新しいアラートやフローを再作成する必要があります。
本シナリオでは、一例として欠品リスク商品数にアラートを設定し、在庫不足時に通知します。
設定
実際に作成したダッシュボードにアラートを設定する手順について説明します。
アラートを設定するビジュアルの右上にある「…」をクリックし、「アラートを管理」をクリックします。

「アラート ルールの追加」をクリックし、詳細なルールを設定します。

詳細なルール設定後、「アクティブ」スライダーがオンであることを確認し「保存して閉じる」をクリックします。

受信確認
設定したアラートが正しく通知されるかを確認します。
検証のために、欠品リスク商品数が1となるよう、在庫数量を5に設定したサンプルデータをウェアハウスに追加し、メールまたはモバイル通知が発生することを確認します。
| 在庫ID | 店舗ID | 商品ID | 在庫日時 | 在庫数量 | 入庫数量 | 出庫数量 |
| I030000 | OS_01 | P001 | 2025-09-30 | 5 | 10 | 30 |
サンプルデータの追加後、ダッシュボードを更新すると、欠品リスク商品数が「1」に変化し、ダッシュボード上に通知されます。

アラートの設定で、「メールも受け取る」にチェックを入れておくことで、アラートの設定者にメールが届きます。

Power Automateによる複数人へのアラート通知
ここまでで、Power BI標準アラートの設定と通知を確認しました。
しかし、標準アラートは設定者本人にのみ通知されるため、チーム全体で共有するには工夫が必要です。
そこで次に、Power Automateを活用して複数人に通知する方法を紹介します。
設定
Power Automateのホーム画面から、「テンプレート」をクリックします。

Power BIと検索し、「Power BI データ アラートがトリガーされたときに対象ユーザーにメールを送信する」をクリックします。

Power BIとメールの接続を確認した上で、「続行」をクリックします。

テンプレートを選択すると、トリガーとアクションを含むフローが自動で作成されます。次に、各ステップ(トリガーとアクション)の設定を行います。

Power BIのトリガーをクリックし、パラメーターの「アラートID」で通知対象となるアラートを選択します。

続いて、メール送信アクションをクリックし、パラメーターの各フィールド(宛先、件名、本文)に必要な情報を入力します。宛先には複数のメールアドレスを指定できます。

各ステップの設定内容に問題がないことを確認し、「保存」をクリックします。

これでPower Automateでの設定が完了しました。
受信確認
設定した宛先に、アラート通知が届くことを確認します。
以下は、通知メールの受信画面です。

終わりに
今回は、ダッシュボード編として売上と在庫の主要KPIを集約したダッシュボードの作成方法と、アラート通知の設定手順について紹介しました。
重要指標をダッシュボード上に集約し、しきい値に基づくアラートで異常を自動検知する仕組みを実装しました。さらに、Power Automateを活用することで、複数人への通知を行い、現場での即時共有と迅速な対応を可能にする方法も解説しました。
本シリーズを通じて、データモデル構築からレポート、ダッシュボード、アラートまでの一連の流れを学び、Power BI学習のヒントを掴んでいただければ幸いです。