生成AIで「思った通りの答え」が返ってこない――そんな経験はありませんか。
生成AIから最大の成果を引き出す鍵は、実は指示文=プロンプトの書き方にあります。
本記事では、ChatGPT や Microsoft Copilot を使い始めたばかりの方向けに、今日から実践できるプロンプト設計の基本ポイントを5つに整理しました。
具体例とともに、生成AI初心者でもすぐに再現できるコツを分かりやすく解説します。
- 第1章:「プロンプト=生成AIとの対話の設計図」として考える
- 第2章:基本構造「Role・Instruction・Context・Output」を押さえる
- 第3章:深津式プロンプトで構造化する
- 第4章:出力は“一発勝負”ではなく“たたき台”
- 第5章:Copilotでは「C.G.E.S.モデル」で設計する
- まとめ:5つのポイントでプロンプト設計を強化
- おわりに
第1章:「プロンプト=生成AIとの対話の設計図」として考える
生成AIを活用する際に最も大切なのは、生成AIが求めている情報をどれだけ的確に与えられるかです。
単に質問を投げかけるだけでは、望む成果は得られません。プロンプトは単なる質問ではなく、生成AIとの対話を通じてどんな成果を得たいのかを明確に伝える“設計図”として捉える必要があります。
プロンプトの質によって、生成AIが出力する内容の精度や実用性は大きく変わります。
例えば「マーケティングの提案をして」とだけ伝えると、生成AIは非常に幅広い可能性を考えすぎてしまい、意図に合わない提案が返ってくる可能性があります。
一方で、生成AIに期待する役割や目的、背景などを明確に伝えたプロンプトであれば、出力の質は大きく向上します。
改善前の例
マーケティングの提案をして
このプロンプトでは、対象や商品・サービス、利用する媒体などの情報がありません。そのため、汎用的で抽象的な回答になりやすいです。
ポイントを押さえた例
あなたはマーケティング戦略の専門家です。30代女性向けの新しい化粧品ブランドを立ち上げたいので、SNS活用を中心としたプロモーション戦略を3つ提案してください。提案は箇条書きで。
このプロンプトには、次の要素が明確に含まれています。
- 生成AIに期待する役割(マーケティング戦略の専門家)
- 対象(30代女性)
- 商品(新しい化粧品ブランド)
- 媒体(SNS)
- 出力形式(箇条書き)
プロンプトを単なる質問ではなく、成果を得るための設計図として意識して書きましょう。これが、初心者が最初に押さえておくべき基本姿勢です。
第2章:基本構造「Role・Instruction・Context・Output」を押さえる
生成AIに的確なアウトプットを求めるには、プロンプトの構造を意識することが重要です。特に初心者におすすめしたいのが、「Role・Instruction・Context・Output」という4つの要素を意識して設計する方法です。この構成は汎用的で再現性が高いのが特徴です。
Role:生成AIの役割を指定する
まず最初に、生成AIに「誰として振る舞ってほしいか」を明示します。これにより、回答の前提や口調、知識レベルが大きく変わります。
あなたは業務効率化に詳しいITコンサルタントです。
Instruction:生成AIにやってほしいことを伝える
どのようなタスクを実行してほしいかを具体的に書きます。曖昧な表現を避け、求めている行動をはっきりと示すことがポイントです。
以下の業務改善案の良し悪しを、プロと初心者の視点から比較してください。
Context:背景や目的、対象者などの文脈を共有する
適切な判断をさせるには、背景や意図の共有が欠かせません。対象読者や利用シーンなどを含めることで、より実用的な提案が得られます。
社内の業務プロセス見直しの一環として、チーム内で議論中の改善案です。
Output:出力形式やトーン、文字数などを指定する
どのような形式で出力してほしいかを指示します。箇条書きや表形式、文字数、敬語の有無などを伝えることで、使いやすいアウトプットが得られます。
出力はMarkdown形式の表で、3つの評価項目に分けてください。
4つの要素を組み合わせることで、生成AIは意図を正確にくみ取り、求める出力に近い結果を出してくれるようになります。迷ったときは、このフレームワークに立ち返りましょう。
第3章:深津式プロンプトで構造化する
プロンプト設計において、日本発のフレームワークとして知られる「深津式プロンプト」は、誤解を防ぎ、再利用しやすいのが利点です。
#命令書(役割と成果物)
生成AIに期待する役割や最終的なアウトプットの種類を明記します。
#制約条件(トーン・形式・語数など)
文体、フォーマット、使用言語、文字数などを指定します。
#入力文(生成AIが処理する対象)
読み取らせたい情報や文章をそのまま記載します。
#出力文(出力イメージ)
書き出し例や希望するフォーマット例を示します。
深津式プロンプト例
#命令書
あなたは社内提案資料の作成アドバイザーです。以下のメモをもとに、上司への提案文を作成してください。
#制約条件
300文字以内。敬語を使用。提案のポイントを簡潔にまとめること。
#入力文
新しい営業支援ツールを導入することで、訪問件数が増加する見込みがある。初期費用はかかるが、営業効率の向上による利益で回収できる想定。
#出力文
営業支援ツール導入のご提案です。訪問件数の増加が見込めるため、売上向上につながると考えています。初期費用は必要ですが、効率改善による利益で十分回収可能です。
深津式プロンプトは構造が明確なため、生成AIが誤解しにくく、何度も使い回しできる点が大きなメリットです。特にMicrosoft Copilotのような業務特化型生成AIと相性が良く、ドキュメント作成や業務サポートにも応用しやすい設計法です。
プロンプトの品質を一段階引き上げたい方は、ぜひこのフレームワークを取り入れてみてください。
第4章:出力は“一発勝負”ではなく“たたき台”
生成AIの活用において、一度で完璧な答えを得ようとする姿勢は逆効果になりがちです。
生成AIとのやり取りはあくまで“対話”であり、最初の出力は「たたき台」として捉えることが成功への近道です。
最初の出力は“仮の答え”
生成AIが返してくる最初の回答は、こちらのプロンプトに基づく推論の初稿です。これをゴールと考えるのではなく、スタート地点として捉えることが重要です。
例えば、生成AIに対して「提案文を作成して」と依頼した場合、最初に出力された文面に少し違和感を覚えることもあるでしょう。そこで重要なのは、なぜ違和感があるのかを言語化し、フィードバックとして生成AIに返すことです。
フィードバックの繰り返しで精度を高める
生成AIは、追加情報や再指示に柔軟に対応できる特徴があります。そのため、次のようなステップを踏むことで、最適なアウトプットに近づけることができます。
- まず生成AIにプロンプトを入力し、初回の出力を得ます。
- 内容を読み、「表現が硬い」「具体例が足りない」など改善点を整理します。
- フィードバックを生成AIに伝え、修正を依頼します。
- 修正案を評価し、必要に応じてさらに改善します。
このプロセスを2〜3回繰り返すことで、自分の意図に合った、質の高い成果物が得られやすくなります。
生成AIは“共同作業者”として扱う
生成AIを「一方的に命令を出すツール」ではなく、「一緒に作り上げるパートナー」として捉えることも大切です。このように対話的なスタンスで接することで、生成AIの能力を最大限に引き出すことができます。
とくにビジネスの現場では、プレゼン資料やメール、企画書などの文書作成において、生成AIとの数回のやりとりで質の高い成果物に仕上げることができます。
プロンプトの設計も大切ですが、出力をどう使うかも成果を左右する重要な視点です。“完璧な一発”を狙うのではなく、“たたき台から育てる”という意識が、生成AI活用の質を高めるコツです。
第5章:Copilotでは「C.G.E.S.モデル」で設計する
Microsoft 365 Copilot(以下、Copilot)は、社内データや業務文書を活用して支援を行う業務特化型の生成AIです。
そこで、本記事ではCopilot向けのプロンプト設計で紹介される「C.G.E.S.モデル」を用い、意図を正確に伝える方法を整理します。
C.G.E.S.モデルとは
項目 | 意味 | ポイント |
---|---|---|
Goal(目標) | 何を達成したいのか | 具体的な成果や目的を明示する |
Context(文脈) | 背景や状況など | 関連する文書や前提を示す |
Expectation(期待値) | 出力形式やトーン | 箇条書き、文字数、敬語など |
Source(参照情報) | 参照すべきファイルや情報源 | 添付ファイル名やメールなどを指定 |
Goal:成果目標を明確に伝える
Copilotに何をしてほしいかを明確にします。例としては、顧客への回答案を作成する、会議内容を整理する、提案書の要約を作る、など。
Context:必要な背景や状況提示
現在の業務フェーズや対象案件、登録済みのデータなどを伝えることで、生成AIの出力精度が向上します。
Expectation:望む出力像の指定
敬語の有無、文字数、形式(箇条書き、表形式、メール文など)を明確に記述します。
Source:参照すべきファイルや情報源
Copilotがアクセスできるドキュメントやチャット履歴などを指定します。参照元を明示することで、より信頼できるアウトプットが得られます。
Copilot用プロンプト例
Goal:
顧客への回答案を作成してください。
Context:
昨日の[Aさんのメール]と[顧客要望まとめ.docx]をもとに
Expectation:
箇条書きで300文字以内。丁寧な口調でお願いします。
Source:
Aさんのメール、顧客要望まとめ.docx
このように記述することで、Copilotは「何を」「どんな文脈で」「どういう形式で」「どの情報を使って」出力すべきかを明確に理解できます。構造化されたプロンプトは、特に業務文書作成や定型処理に役立ちます。
まとめ:5つのポイントでプロンプト設計を強化
- プロンプト=生成AIとの対話の設計図として考える
- 基本構造「Role・Instruction・Context・Output」を活用する
- 深津式プロンプトで構造化する
- 出力は“たたき台”として磨いていく
- Copilotでは「C.G.E.S.モデル」で目的に沿った設計を行う
おわりに
本記事では、生成AI初心者でもすぐに実践できるプロンプト設計の基本を5つの観点から整理しました。特に、Copilotのような業務特化AIを活用する場合、構造化されたプロンプトで意図を明確に伝えることが、成果の質を左右します。
まずは小さなケースから試しながら、プロンプトの設計スキルを磨いていきましょう。伝え方が変われば、生成AIの出力も大きく変わります。
松本 孝祐(日本ビジネスシステムズ株式会社)
Microsoft 365を中心に、Copilotの活用支援を担当。 合計4000人を超える受講者にCopilotを活用した業務効率化のコツを伝えています。 Copilotは使い方次第であなたの強力なパートナーになります、一緒にコパりましょう!
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