メールセキュリティについて 基本編

現代のデジタル社会において、メールはビジネスや個人のコミュニケーションに欠かせないツールとなっています。しかし、その便利さの裏には、サイバー攻撃のリスクが潜んでいます。

フィッシング、マルウェア、なりすましなど、メールを介した攻撃は年々巧妙化しており、私たちの個人情報や企業の機密情報が狙われています。

本記事では、メールを介した攻撃、メールセキュリティの重要性を説明します。

はじめに

はじめに、現在の脅威状況とメールセキュリティの重要性を説明します。

現在の脅威状況

冒頭でも述べましたが、フィッシング、マルウェア、なりすましなど、メールを介した攻撃は年々巧妙化しており、私たちの個人情報や企業の機密情報が狙われています。

攻撃手法として多数存在しますが、代表的なものを紹介します。

フィッシング攻撃

フィッシング攻撃はインターネットを介して個人情報や企業の機密情報を盗み取る詐欺手法の1つです。

私も最近、登録アドレスから「カード再発行依頼」という件名のメールが届きましたが、URLが明らかに怪しかったので、フィッシング攻撃であると気づくことが出来ました。

マルウェア

マルウェアは、悪意のある目的で作成されたソフトウェアの総称です。

メールを介して拡散されるマルウェア攻撃は、特に注意が必要です。

マルウェア攻撃として、ウイルスやワーム、トロイの木馬など多数の攻撃が存在します。

なりすまし

なりすましメールは、攻撃者が信頼できる組織や知り合いを装って送信するメールのことを指します。

受信者をだまして個人情報を盗み取ったり、マルウェアをインストールさせたりすることを目的としています。

メールセキュリティの重要性

メールは、現代のデジタルコミュニケーションにおいて非常に重要な役割を担っています。そのため「メールを無くせば解決」といった方法は現実的ではありません。

そこで、メールセキュリティを取り入れてセキュリティを強化し、メールを介した攻撃を低減することが重要です。

メールセキュリティの基本概念

メールセキュリティを強化するためには、送信者の正当性を確認する技術が重要です。

ここでは、代表的な技術である以下の3つについて説明します

  • SPF(Sender Policy Framework)
  • DKIM(DomainKeys Identified Mail)
  • DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting & Conformance)

SPF

SPFは、送信者の正当性を検証し、フィッシングやスパムメールを減少させ、メールの信頼性とドメインの評判を向上させることで、メールセキュリティを強化します。

SPFは、送信ドメインのDNS(Domain Name System)にSPFレコードを追加することで機能します。このレコードには、そのドメインからメールを送信することが許可されているメールサーバーのIPアドレスがリストされています。

  • 送信側
    • メール送信者は、自分のドメインのDNSサーバーにSPFレコードを設定します
    • このレコードには、許可されたメールサーバーのIPアドレスが含まれます
  • 受信側
    • メール受信者のメールサーバーは、受信したメールの送信元IPアドレスを確認し、そのIPアドレスが送信ドメインのSPFレコードに含まれているかどうかをチェックします
    • もし含まれていれば、そのメールは正当なものと見なされます
    • 含まれていなければ、メールはスパムとして扱われるか、受信拒否されます

DKIM

DKIMは、メールの送信元ドメインを認証するための技術です。送信者のドメインがメールに電子署名を付与し、受信者側でその署名を検証することで、メールの正当性を確認できます。

これにより、なりすましメールやスパムメールを防止し、メールの信頼性を高めることができます。

以下プロセスにより、DKIMはメールの送信元の正当性を保証し、メールの信頼性を向上させます。

  1. 電子署名の付与
    • メール送信者は、秘密鍵を使ってメールに電子署名を付与します
    • この署名には、メールのヘッダー情報や本文の一部が含まれます
  2. DNSサーバーへの公開鍵の登録
    • 送信者は、自分のドメインのDNSサーバーに公開鍵を登録します
    • この公開鍵は、受信者が署名を検証するために使用されます
  3. 署名の検証
    • メール受信者は、受信したメールのDKIM署名を確認し、送信者のDNSサーバーから公開鍵を取得します
    • 受信者は、公開鍵を使って署名を検証し、メールが改ざんされていないか、送信者が正当であるかを確認します

DMARC

DMARCは、メールの送信元ドメインを認証し、フィッシングメールやなりすましメールを防ぐための技術です。2012年に発表され、SPFやDKIMと連携して動作します。

DMARCを導入することで、メールの信頼性を高め、フィッシングやなりすましのリスクを大幅に減少させることができます。

  1. SPFとDKIMの検証
    • メールが送信されると、受信サーバーはまずSPFとDKIMの検証を行います
    • SPFは送信元IPアドレスが許可されているかを確認し、DKIMはメールに付与された電子署名を検証します
  2. アライメントの確認
    • DMARCは、SPFとDKIMの検証結果が送信元ドメインと一致しているか(アライメント)を確認します
    • これにより、送信元ドメインが正当であることを保証します
  3. ポリシーの適用
    • ドメイン所有者は、DNSにDMARCレコードを設定し、認証に失敗したメールをどう処理するかを指定します
    • ポリシーには以下のの3つがあります
      • none(何もしない)
      • quarantine(隔離)
      • reject(拒否)
  4. レポーティング
    • DMARCは、認証結果をドメイン所有者にレポートします
    • これにより、どのメールが認証に成功し、どのメールが失敗したかを把握できます

メールセキュリティの必要性

メールセキュリティが設定されていない場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • なりすましメールの増加
    • 攻撃者がドメインを悪用して、フィッシングメールやスパムメールを送信するリスクが高まります
  • メールの信頼性低下
    • 受信側のメールサーバーが送信元の正当性を確認できないため、組織のメールがスパムフォルダに振り分けられる可能性が高くなります
  • メールの到達率の低下
    • 正当なメールが迷惑メールとして扱われることが増え、重要なメールが受信者に届かないことがあります
  • セキュリティリスクの増加
    • フィッシング攻撃やマルウェアの拡散が容易になり、セキュリティインシデントのリスクが高まります

メールセキュリティのベストプラクティス

メールセキュリティを強化するためには、前述以外にも実践するべきことがあります。

  • 強力なパスワードの使用
    • パスワードの使いまわしを避け、長くて複雑なパスワードを設定します
    • パスワードには大文字、小文字、数字、特殊文字を組み合わせると効果的です
  • 多要素認証(MFA)の導入
    • 追加の認証手段を使用することで、セキュリティ強化や不正アクセス防止等セキュリティの強化とユーザーの利便性向上を両立することができます
  • セキュリティトレーニング
    • メールでの攻撃は身近なところで起きているため、個人に対し安全なメールの使用方法やシミュレーションなどを実施し、対応力を高くすることが重要です
  • セキュリティソフトの導入
    • メールセキュリティ製品を導入し、セキュリティ強化を行う方法もあります
    • セキュリティにあまり知見がない場合でも扱いやすいのが利点です
  • エンドポイントセキュリティの強化
    • 従業員のデバイスを保護するためのエンドポイントセキュリティソリューションを実装し、ネットワークレベルの防御を補完します

まとめ

メールセキュリティは、情報漏洩やサイバー攻撃を防ぐために重要です。

フィッシングやスパムメールなどの脅威に対して、SPF、DKIM、DMARCなどの認証技術を導入し、送信者の正当性を確認することが必要です。

企業はセキュリティポリシーの策定や社員教育を通じて、全体的なセキュリティを強化することが求められます。また、AIやクラウドベースの技術を活用し、最新の脅威に対応することが重要です。これらの対策を実践することで、安全なコミュニケーション環境を維持できます。

次回は具体的なメール製品を例に挙げて、設定に関する説明を実施予定です。

執筆担当者プロフィール
森﨑 湧斗

森﨑 湧斗(日本ビジネスシステムズ株式会社)

セキュリティビジネスグループの森﨑です。 普段はネットワーク案件ベースで、今期よりセキュリティコンサル業務も対応しております。 今後は自身で学んだセキュリティ関連の内容を投稿していきたいと考えております。 趣味としては、2か月に1回旅行に行くことです。 行ったことない場所から選んで、事前計画を考え、いつもパートナーに提案してるのが、小さな楽しみです。

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