Teamsを利用するうえで必要不可欠なチーム機能ですが、使っていないチームをいつまでも残しているとTeamsの制限事項に抵触して、新規チームが作成できなくなる事態に陥る可能性があります。
そのため、定期的に棚卸しをして運用していく必要があります。
今回は、Teamsを新規導入する際にポイントとなる、Teamsチームの運用設計について記載します。
Teamsチームの制限事項
まず、Teamsチームの制限事項は下記の通りとなります。
機能 |
上限 |
ユーザーが作成できるチームの数 |
250個 |
ユーザーがメンバーの一員になることができるチームの数 |
1,000 |
チームのメンバーの数 |
25,000 |
チーム 1 <つあたりの所有者数 |
100 |
テナントで許可されている組織全体のチームの数 |
5 |
組織全体のチームのメンバーの数 |
10,000 |
グローバル管理者を作成できるチームの数 |
500,000 |
Microsoft 365また Office 365 組織が持てるチームの数 |
500,000 |
チームごとのチャネル数 |
1,000 |
チームごとのプライベートチャネル数 |
30 |
プライベートチャネルのメンバー数 |
250 |
チームにインポートできる配布リスト、セキュリティグループ、または Microsoft 365 グループの最大サイズ |
3,500 |
チームに変換できる Microsoft 365 グループのメンバーの最大数 |
10,000 |
チャネル会話の投稿サイズ |
投稿ごとに約 28 KB |
引用元:Microsoft Teams の制限事項と仕様 - Microsoft Teams | Microsoft Learn
この記事での細かい仕様説明は割愛しますが、1テナントで作成できるチームの総数や1ユーザーが参加可能なチーム数には上限値が存在するため、チームを作成してそのまま残し続けていると、いつか上限値に達してしまう可能性は高いです。
そのため、定期的な棚卸等の運用設計は非常に重要になってきます。
次章では、Teamsチーム機能の設計から想定される運用パターンやメリット・デメリットについて記載していきます。
Teamsチーム運用設計のパターン
Teamsチーム運用設計ポイントとなる、チームの新規作成の方針には以下の2パターンが考えられます。
- チームの新規作成をユーザーが自由に行えるようにする
- チームの作成権限はIT管理者に絞る
どちらを選択するかによって、想定される運用は大きく変わってきます。
パターン1:Teamsチームの新規作成はユーザーが自由に行えるようにする場合
Microsoft Teamsの既定値では、チームの新規作成はユーザー自身が実施できるようになっています。
ユーザーが自由にチームを作成できるように設計した場合のメリット・デメリットとしては、以下のようなポイントがあげられます。
- メリット
- チームを自由に作成できるためコミュニケーションの活性化、促進につながる
- チーム作成の運用工数がIT管理者等権限を持ったユーザーに偏らない
- デメリット
- チームが乱立する可能性があり、結果として不要なチームの棚卸し等の運用工数の増加につながる可能性がある
- チームの作成の統制が困難になるため、想定外の利用方法や使い方が発生する可能性がある
この場合、チーム作成を誰でも出来てしまうが故に不要なチームが乱立する可能性が高くなり、棚卸しに関する運用負荷も高くなることが想定されます。
パターン2:Teamsチームの新規作成IT管理者のみが実施できるようにする場合
もう一つの選択肢として、Teamsチームチームの作成をエンドユーザーが自由に行うことを制御し、IT管理者など一部の限られたユーザーに絞ることが考えられます。
この場合に想定されるメリット・デメリットとしては以下があげられます。
- メリット
- チーム作成の統制が行えるためチームの乱立を防止することが可能となる
- 結果として、チームの棚卸しの工数低減につながる可能性がある
- チーム作成の統制が可能となるため、意図した目的や用途で運用することが可能となる
- チーム作成の統制が行えるためチームの乱立を防止することが可能となる
- デメリット
- チームを自由に作る事が出来ないため、コミュニケーションの活性化、促進を阻害する可能性がある
- チームの作成がIT管理者等権限を持つユーザーに偏るため、チーム作成権限を持つユーザーの運用工数が増加する
この場合、チームの棚卸の負荷は低くなるものの、チーム作成をIT管理者など一部のユーザーが請け負うことになるため、チーム作成の運用負荷が高くなることが想定されます。
なお、設定手順に関してはMicrosoftのドキュメントをご参照ください。
Microsoft 365 グループを作成できるユーザーを管理する | Microsoft Learn
各パターンに対する運用負荷の軽減案
ここまで記載してきた通り、どちらのパターンでも、Teamsチームの運用をするうえでIT管理者の運用負荷が上がってしまうという現実があります。
しかしながら、それぞれのパターンに対して対策を検討することは可能ですので、その一例を記載しようと思います。
パターン1に関する対策:Microsoft 365グループの有効期限を設定する
パターン1に対する対策方法として、Microsoft 365グループの有効期限を設定することでTeamsチームの棚卸を自動化させることが可能となります。
例えば最終更新日から一定期間が経過したチームを自動で削除したり、有効期限が近付いているチームの所有者に対してメールで通知を出して有効期限の延長を選択させたりといった、一連の棚卸作業を自動で実施することできます。
本件に関してはMicrosoftのドキュメントや本Tech Blogでも紹介されておりますので、ご参照ください。
- Microsoft 365 グループの有効期限ポリシー | Microsoft Learn
- Microsoft 365グループの有効期限ポリシーを使ってTeamsチームに有効期限を設定する - JBS Tech Blog
但し、こちらの対策にはMicrosoft Entra ID P1またはP2ライセンスをユーザー数分購入する必要がありますのでご注意ください。
Microsoft365 E3/E5であれば包含されているため問題ありませんが、Office365 E3/E5ライセンスの場合は別途アドオンライセンスが必要となりますのでご注意ください。
Microsoft Entra ID ガバナンス ライセンスの基礎 - Microsoft Entra ID Governance | Microsoft Learn
パターン2に対する対策:Power Automateを用いてフロー開発を実施する
パターン2に対する対策としてPower Automateを用いて、チーム作成申請~チーム作成までのフローを自動化する方法が考えられます。
別途開発や設計を実施する必要がありますが、Power Automateを用いたフロー作成は特別な開発コード等の知識を必要とせずノンコードでの開発が可能となりますので、開発負荷はそれほど高くありません。
チーム作成申請からチーム作成までの一連のフローを自動化することができれば、運用負荷を軽減させることができると思います。
おわりに
システム機能設計する中で、ついついユーザー目線での要件に着目しがちになることが多いかと思いますが、IT管理者観点やシステム運用観点での要件も意識して設計をすることが大変重要となります。
今後とも様々なシステムの設計における注意点を発信していこうと思いますのでご参考になれば幸いです。
前野 真夏(日本ビジネスシステムズ株式会社)
クラウドソリューション本部所属。 Microsoft 365ソリューションを主軸に、Active Directoryなどの認証領域も担当している。 趣味はカラオケと銭湯巡り。好きな音楽のジャンルは邦ロック。
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