はじめに
クラウドPBXを導入の際、トラブルに見舞われるケースはあります。それらのトラブルは多種多様で、どの分野に問題が生じているのか確認が難しい特徴があります。
サービス提供業者においても、導入時の注意点を説明していますが、それでもトラブルは減りません。なぜそういったトラブルが起きるのか、またその注意点を理解していきたいと思います。
大事な人の声とシステムアラート
トラブルが発生すると最初に始まるのは人の声でのトラブル報告です。
人の声でのトラブル報告は内容が多種多様です。その表現も人それぞれになりますが、ここはしっかり耳を傾けたいところです。
というのも、こういった不良状態の連絡があっても、あらかじめ仕掛けたシステムアラートは発報してないことがほとんどです。
システムアラートで発報が無い理由は2つあります。
1.PBXの設定ミス
2.不審な通信は発生していない
いずれも専門家を要する状況となり、これが解決を遅らせる要因となります。
クラウドPBXは手ごろな価格や機能実現の容易さが特徴ですが、それでも、既存社内環境への導入に際しては、通信要件についてしっかりとした事前確認が必要になります。
ここで一番確認したいのは人の声です。人の声はトラブル解消に向かう近道となります。
人の声のアラートの内容は様々ですが、その表現から、トラブルの内容が見えてきます。
片通話、ぶつぶつ音、途切れる、エコーが聞こえる、着信しない、発信できないなど表現方法はさまざまですが、声を聴き分け、どこにトラブルがあるのかを見極めたいと思います。
トラブル報告の種別
トラブル報告には「完全に通信できない」というものだけでなく、「通信できる時もある」や「音の品質が悪い」など正常状態と異常状態を繰り返すエラーも報告されます。
そしてそれらのトラブルは従来のシステムアラートでは発報されないことも特徴です。
また、「着信しない」など、通信トラブルか設定ミスかがわからないため、疑うべきポイントがわかりずらい特徴があります。
電話回線を利用していた従来の電話交換機であれば、電話業者に一括依頼することで、問題の修正を行っていただき解消できていたと思います。
これは、電話業者において、交換機も電話回線に関しても管理範囲とみなし、キャリアへの対応依頼も含め対応をいただいていたことに起因します。
クラウドPBXの場合はインターネット回線を利用する形になります。クラウドPBXの準備はクラウドPBX業者がおこないますが、通信経路であるインターネットはユーザーが準備し、通信に適した設定を行います。
しかしながら導入時のトラブルは避けられないことが多くあります。
クラウドPBX導入時の責任範囲とは
導入時のトラブル時になぜすぐ問題解決できないのでしょうか。これを考えるためにはクラウドPBXの責任範囲を再確認する必要があります。
導入時には大きく分けて4つの責任分解点が存在しています。
そしてそれそれの導入範囲について記載します。
PSTN:回線キャリア
通話用キャリアとしての責任範囲は、電話回線を宅内に引き込むところまでとなります。
ゲートウェイ(GW):クラウドPBX業者
PSTN回線をクラウドに導く大事な仕事をする機器です。
- 設定
- 指定FQDNへID、パスワードでログインする設定を施す必要がある。
- 通信
- インターネットを経由してクラウドへ行われる。
- 正常稼働の確認はPSTN網側とインターネット網側双方で行う必要がある。
クラウドPBX:クラウドPBX業者
クラウドPBXにおけるトラブルはPBXの機能面だけに見えるますが、クライアントとなるゲートウェイと電話機との疎通があるため、ネットワーク通信の起点として稼働しています。
また、端末の認証もクラウドPBXで行われています。
インターネット:インターネット業者
特別なものはなく、普通のインターネット回線となります。
ユーザー環境:ユーザー
ユーザー環境への導入時において、ルータが最も重要な要素となり、トラブルの原因もここに集中しています。
ルーターの管理が自社ではないことが多く、またルーター導入時よりメンテナンスされていないことも多くあります。
電話機:クラウドPBX業者
電話機はアカウント設定や個別設定をクラウドPBX業者が行い、現地設置するケースが一般的です。
まとめ
それぞれの責任範疇を明確化して置くことは重要なことです。分散して確認せず、すべてを俯瞰し、状況把握する必要があるのが、導入およびサポートにおけるクラウドPBXの最大の特徴であることは認識したいと思います。
また、クラウドPBXの導入時のトラブルを避けるため、事前に確認を行っておく必要があります。そのために、導入する企業側で次の3点を押さえて実施してください。
- 利用する番号や回線の準備について理解する
- レガシーPBXで使用している機能のうち、クラウドPBXでも継続して使いたい機能はについて、実現の可否確認を見極める
- 自社におけるネットワークポリシーとクラウドPBXの通信要件を照らし合わせ、親和性の確認を必ず行うこと。
この3つを必ず実施することで、クラウドPBX導入時のトラブルを無くすことができます。
次回、人の声をいかしてどうトラブルを解消するか、具体例を挙げて説明します。
高山 智行(日本ビジネスシステムズ株式会社)
入社24年目、パケット音声にまつわる技術をJBSにため込みたいと考えています。 そのため、レガシーPBXからクラウドPBXまた通信端末として電話機やスマホに詳しいです。 WindowsよりLinuxやAsteriskに精通しています。 音声パケット通信のためのネットワーク構成もここに残します。
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