本記事では、Copilot Studioで作成したエージェントとPower Automateを組み合わせて、Microsoft Teamsにメッセージを送信する仕組みを構築します。
今回は、シフト情報を教えてくれるエージェントを作成しました。エージェントにシフト関連の質問を行い、そのままエージェントチャット内から、特定のメンバーにシフト交代の打診をTeamsに送信できます。裏側ではPower AutomateがTeamsへのメッセージ送信を自動処理しますが、ユーザーはその仕組みを意識する必要はありません。すべてエージェント内で完結するため、操作はシンプルです。
この仕組みを構築するための手順をわかりやすく解説します。
Copilot Studioエージェントとは
Copilot Studioエージェントは、Microsoftが提供するAIチャットボットで、業務の自動化や支援を目的に作られたツールです。主にMicrosoft Teams上で動作し、質問への回答や業務プロセスのサポートを行います。
Copilot Studioを使えば、組織のニーズに合わせてエージェントを自由にカスタマイズでき、ExcelやWordなどのMicrosoft 365アプリとも連携して、文書作成やデータ処理を効率化できます。
この記事でできること
- Copilot Studioの[トピック]機能の理解
- 特定のキーワードに反応するトリガーの設定
- Power Automateを使ってユーザーへメッセージを送信
Copilot StudioとPower Automateの設定手順
Copilot Studioでエージェントを作成し、トピックを設定します。
エージェントの作成
1.https://copilotstudio.microsoft.com/ にアクセスし、Copilot Studioにログインします。
2.ホーム画面から[エージェント]-[新しいエージェント]を選択します。
3.[構成]タブから、エージェント名、説明、指示、ナレッジの追加など、基本設定を行います。設定が完了したら右上の[作成]をクリックします。今回はシフト情報を教えてくれるエージェントを作成しました。
トピックフローの作成
次に、Copilot Studioでユーザーとの会話フローを設計し、Power Automateに渡すための情報(送信先ユーザーやメッセージ内容など)を整理するトピックフローを構築します。
トピックフローの全体像
フローの全体像は以下です。
ここでは、ユーザーの入力内容とエージェントの応答を整理し、Power Automateに必要な情報を正しく渡すことがポイントです。
トピックの設定
1.上部メニュー[トピック]をクリックします。[+ トピックの追加]-[最初から]をクリックします。
2.トリガーを設定します。今回は特定のフレーズやキーワードが送信された時に起動するトリガーを設定します。複数の言い回しを登録しておくと、より自然な会話に対応できます。
- トピックの機能を説明する:「シフト変更依頼」、「シフト交代の打診」
3.[質問]のアクションを追加し、エージェントからの質問メッセージを設定します。今回はユーザーのメールアドレスを知りたいので次のように設定します。
- 質問内容:「送信相手のメールアドレスを教えてください」
- 特定:プルダウンから[ユーザーの応答全体]を選択
- ユーザーの応答を名前を付けて保存:[UPN]という変数名に変更
4.[質問]のアクションを追加し、エージェントからの質問メッセージを設定します。今回はユーザーへ送信する内容を知りたいので次のように設定します。
- 質問内容:「送信する内容を教えてください」
- 特定:プルダウンから[ユーザーの応答全体]を選択
- ユーザーの応答を名前を付けて保存:[送信内容]という変数名に変更
5.PowerAutomateフロー作成に移るため、ここで一度保存しておきます。
Power Automateフローの作成
次に、Power Automateでエージェントから受け取った内容をトリガーとして処理し、Teamsの特定ユーザーに「メッセージを送信」「承認依頼」を行うフローを構築します。
Power Automateフローの全体像
ここでは、Copilot Studioから渡された情報をトリガーにPower Automateを起動し、Teamsにメッセージを送信する仕組みを構築します。さらに、承認フローも組み込んでいるため、「シフト交代の打診」を承認するか拒否するか返信できるようにしています。
フローの全体像は以下です。
Power Automateの設定
1.https://copilotstudio.microsoft.com/ にアクセスし、Copilot Studioにログインします。
2.Copilot Studioの[フロー]から、[新しいエージェントフロー]をクリックします。
3.[エージェントがフローを呼び出したとき]のトリガーを選択し、パラメーターは次のように設定します。ここでは、Teamsで特定ユーザーにメッセージを送るため、エージェントからメールアドレスと送信内容を受け取ります。
- テキスト:UPN
- テキスト:送信内容
4.[ユーザー プロフィールの取得 (V2)]のアクションを追加し、動的コンテンツから[エージェントがフローを呼び出したとき]の[UPN]を設定します。
5.[ユーザーの @mention トークンを取得する]のアクションを追加します。動的コンテンツから[ユーザープロフィールの取得(V2)]の[ID]を選択します。
6.[チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する]のアクションを追加します。今回は次のように設定します。
- 投稿者:フローボット
- 投稿先:フローボットとチャットをする
- Recipient:[エージェントがフローを呼び出したとき]のアクションで取得した動的アクション[UPN]を設定
- メッセージ:[ユーザーの @mention トークンを取得する]と[エージェントがフローを呼び出したとき]の[送信内容]を設定。
7.[Respond to the agent]を選択し、パラメーターは次のように設定します。このアクションは、Power Automateで処理した結果をCopilot Studioのエージェントに返すために必要です。設定することで、エージェントはユーザーに「処理が完了した」ことを会話内で通知します。
- テキスト:結果報告
8.[開始して承認を待機]のアクションを追加します。パラメーターは次のように設定します。
- 承認の種類:承認/拒否 - 最初に応答
- タイトル:シフト調整
- 担当者:[エージェントがフローを呼び出したとき]のアクションで取得した動的アクション[UPN]を設定
- 詳細:[エージェントがフローを呼び出したとき]のアクションで取得した動的アクション[送信内容]を設定
9.設定が完了後、右上に表示されている[下書きを保存する]と[公開]を必ず実行します。また、必要に応じてPower Automateフロー名を設定します。
Copilot StudioとPower Automateの連携
Copilot Studioのトピックに戻り、前段で作成したPower Automateフローを追加します。
1.[ツールを追加する]アクションを選択し、作成したAutomateのフローを追加します。
- [Power Automate入力(2)]:トピック内で設定した変数を各項目に入力
- [出力(1)]:自動入力される
2.[メッセージを送信する]アクションを追加し、リクエストが送信されたことを通知します。
3.最後に[トピック管理]から[会話の終了]アクションを追加し、トピックを終了します。
4.設定が完了後、右上に表示されている[保存]と[公開]を実行します。
実際の挙動
作成したエージェントの挙動をTeams側で確認します。
1.Copilot Studioの[チャネル]タブから、[Teams と Microsoft 365 Copilot]をクリックします。
2.Teamsにて作成したエージェントを開き、シフト情報について質問します。エージェントはナレッジの情報から回答します。
3.エージェントの回答を確認し、特定ユーザーへシフト交代の打診を送信します。プロンプトからトリガーとなる「シフト交代の打診」を選択し送信します。
4.トリガー送信後、エージェントから「送信相手のメールアドレス」と「送信する内容」について質問されるので、回答します。初回は資格情報の検証が求められるので[接続マネージャーを開く]をクリックします。
5.[接続の管理]が開くので、[状態]が[古い]ステータスになっているものは[レビュー]をクリックし、[送信]を実行します。
6.資格情報の検証が終わるとTeamsのエージェントに戻るので、[再試行]をクリックします。
7.「再試行」の後、エージェントにて「リクエストが送信されました。」と表示されます。
8.送信相手のTeams Workflowに[メッセージ]が通知されます。
9.しばらくして、送信相手のTeams「承認」タブに「承認依頼」が通知されます。承認フローの受信/送信の内容が確認でき、過去の承認フローも一覧で確認することができます。
10.送信相手から承認もしくは拒否が送信されると、依頼者のTeams「承認」というタブに通知されます。
まとめ
Copilot Studioの[トピック]機能とPower Automateを組み合わせることで、Teams上でのメッセージ送信や承認依頼などを自動化でき、業務の効率化に大きく貢献します。
ユーザーは複雑な操作を意識することなく、自然な会話の流れで処理を完了できるため、現場での活用にも適しています。
本記事の内容を参考に、ぜひ組織のニーズに合わせて活用してみてください。
吉武 成美(日本ビジネスシステムズ株式会社)
2022年度新卒入社。Microsoft 365 製品(Intune)などのクラウド及びオンプレミスを担当しています。趣味はドライブとUFOキャッチャーです。
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