SIerが知るべき電話交換機のこと2

はじめに

電話交換機がクラウドになったり、電線を使った通信がパケット通信になったりと、電話に対する変革は多岐にわたり進化を遂げたと思います。

ITはSave(保存)されたデータのやり取りをする情報通信を基礎に発展を繰り返していますが、電話は、リアルタイムでのデータ通信を主軸としており、Save(保存)データは機能として使われています。

本記事では「リアルタイムでのデータ通信と何か」について説明します。

リアルタイム通信

電話で会話をする行為は電話機に音を伝える行為です。

旧来、人は音声を糸電話のように振動に変え、振動をその先に伝える形で通信を行ってきました。電気での通信も糸電話と変わらず、電線に受話器のマイクで振動に代わる電気信号を送り、受話器のスピーカーで出力していました。

振動や信号による音の伝達方法

その大きな特徴は保存されることのない情報の伝達にあります。リアルタイム通信の最大の特徴です。

リアルタイム通信に求められる特徴は”ありのままの音を、改編無くその同時刻に相手に伝える”こと。そして同時にこれが目的となります。

電話が普及した世の中ではごく普通のことで、今や電話の常識として広く理解されていることです。しかしながらこの常識をITで具現化し、人の感覚において問題が生じない程度への技術革新は、今も現在進行形であることを覚えておいていただきたいと思います。

音声コーデック

ATDとDTA

人の声はアナログであり、振動を伝達したり電気的信号で通信することが可能です。

ただし、振動や、電気的信号で限界があります。振動では、振動が伝わる範囲が通信範囲になります。電気信号では、電気抵抗による信号が減衰します。そのため増幅を繰り返し距離を稼ぐ必要がありました。

又 アナログ信号は1通話当たりの電話局での設備占有率が高いため、固定電話や携帯電話の普及には通信のデジタル化は必然でした。

しかしながらここに大きく問題になる二つの壁が存在していました。

  • ATD: Analoge to Digital
    • アナログの音声をデジタルに変化させる仕組み
  • DTA: Digital to Analoge
    • デジタルをアナログに変化させる仕組み

この二つの壁をリアルタイムで解決し、電話の通話をなり立たせる技術が必要です。これらの技術を音声コーデックと呼んでいます。 

音声コーデックの語源は音声コーディング(符号化)と音声デコーディング(複合)です。発声側で声をパラメーター化し、聞く側ではその声を複号させる技術です。

有名な音声コーデックはNTTが採用したPDCやKDDIが採用したcdmaOne、海外で主流なGSMがあります。又、昨今のインターネットの普及で登場した「クラウド電話や会議を行う仕組み」でも音声コーデックは必須で、G.711 ,PCMU,SILK, Opus などITU‐T(国際電気通信標準化部門)で国際標準化されたものが使われています。

リアルタイム通信での音声コーデックの流れ

音声コーデックは発展中の技術です。現在でも音声表現と高速化のため、多くの音声コーデックが実験段階にあります。表現力が高くなればデータが肥大し速度が鈍化します。よりよいコーデックの開発は大事なミッションとなっています。

将来の音声コーデック

通信パケットを利用する限りにおいてですが、音声コーデックの開発は非常に時間が掛かります。また、利用者が増えれば増えるほど、ユーザ―のこだわりや要求は指数関数的に増大し、新しい音声コーデックの開発が必要となります。

もう一つ非常に重要なのはサイズです。データに影響を受けず、与えず、インターネットでの通信を可能とする必要があります。良い音を伝えるためには大容量パケットが、低遅延を求めるならサイズが小さくならなければならず、相対する要件を満たす必要があるからです。

リアリティを求めハイブリッドでコーデックを開発したり、遅延対策のため電話機で音声を符号化し、復号では合成音声を利用するなど、技術革新は続いています。

最後は何処かで標準化が行われ、絞られていくことは間違いなく、それまでは競争が続いていくと考えられます。

UDPの必要性

符号化された音声はパケットで送信されますが、送信する際のパケットにはUDPが選ばれることが多くあります。UDPが選択されるのはその性質からなのですが、特徴はしっかりと理解しておく必要があります。

UDPパケットで送られる符号化された音は、「受話器に入るすべての音」となります。そして受話器に入る音は規則性や実行タイミングがわからない自然発生のモノが多くあります。その他、受話側が意図しない音も含まれます。 

受話側の目的は内容だけなく、情報として環境音も含まれ、それらの再現性の追求がコーデックの宿命です。そういったコーデックを送信する場合、送信の成功の判断をしないプロトコルの利用が必要になります。そのためUDPが選択されます。

UDPは長く、”不必要”、”危険”などの分類を受けていたプロトコルです。ほとんどのネットワーク通信がTCP/IPで行われる世の中で、この10年ほどで、急速に流用できるようになっていプロトコルです。

少し古いルータではUDPは通信許可されていな場合も多くあります。音声を扱う際にはUDPの性格を理解し、滞らせない設定が必要となります。 

入力から出力まで

まとめ

"SIerが知るべき電話交換機のこと2" として、リアルタイムでのデータ通信と何かを、リアルタイム音声通信において音声コーデックがどのように利用されているかを中心にまとめました。

リアルタイム音声通信は、ネットワークの通信とは別の機能です。混同しないよう理解したいところです。

リアルタイム音声通信のポイントは次の2点です

  1. 保存されないデータ送信であること。
  2. 音声コーデックにより通信媒体で符号化→復号が行われ、音声がデジタル化されていること。

将来、今のインターネットが続くのであれば、音声コーデック技術は開発が続くと思います。 

人が求めるリアリティーの追及はとどまらないため、無限に分析を行い、本物と変わらない音のデータ化技術の確立が行われていくと考えられます。

音の伝送の必要性は、音楽、ボーカロイド、対話型チャット、ロボット、セキュリティでの利用などでも多岐にわたります。 

どのような発展を告げることになるのか、楽しみな要素です。

執筆担当者プロフィール
高山 智行

高山 智行(日本ビジネスシステムズ株式会社)

入社24年目、パケット音声にまつわる技術をJBSにため込みたいと考えています。 そのため、レガシーPBXからクラウドPBXまた通信端末として電話機やスマホに詳しいです。 WindowsよりLinuxやAsteriskに精通しています。 音声パケット通信のためのネットワーク構成もここに残します。

担当記事一覧