電話交換機のクラウド化

はじめに

「電話交換機のクラウド化」のリサーチを始めると、多くのサービスが世の中にあることがわかると思います。その中で何を選択するべきか検討することはとても大変な作業になります。

その原因は、サービス提供する各社において、機能の提供範囲が大きく異なる事や、機能においてその使い方が従来と違うため想像が難しい、といった事があるためです。

電話のように普段から多く利用されるシステムにとって、使い方に対する大きな変化はユーザーの混乱を招き、運用が難しくなる可能性もあります。

ここでは、電話交換機のクラウド化において重要なポイントを押さえ、選択と導入で失敗しないクラウド化を説明いたします。

電話交換機のタイプ

電話交換機のタイプを選択することは、クラウド化において最重要なポイントになります。大きく分けて2タイプしか存在しません。

  1.ダイヤルインタイプ
    電話の着信がダイヤルイン(個別着信)することを前提に設計されています。

  2.グループタイプ
    着信時に複数名が同時に鳴動することを前提として設計されています。

この2タイプは、電話交換機において相反する設計となっており、選択前に確認が必要です。

ダイヤルインタイプは多くの外資系企業で採用されているタイプとなっており、ボイスメールや自動転送など、通話回線の管理を個人にゆだねることで、通話情報の秘匿性を高く保つことができます。

対してグループタイプは、日本の企業で多く採用されているタイプとなり、1つの着信をなるべく多くの社員で受話することで、顧客からのアプローチを逃すことなく対応することを目的といて設計されています。

2つのタイプの一番の違いは、通話チャネル制御にあります。

ダイヤルインタイプは1ユーザーが1通話チャネルを占有する仕組みになっており、使われる機能も1チャネルを基本として交換機及び電話機が設計されています。

グループタイプの場合、通話中は1チャネル占有となりますが、複数着信鳴動時、転送時、指定保留時は複数チャネルを同時に利用できることが一番の特徴となっています。

その機能に合わせ、INS64 やINS1500 等の回線もキャリアから提供され、交換機や電話機も複数チャネル対応できるよう設計されています。

日本におけるクラウド電話交換システムの市場

多くの日本企業ではグループタイプを選択したいと考えると思いますが、流通するクラウドサービスではダイヤルインタイプが台頭しています。

原因はいくつかありますが、Microsoft Teams, Zoom, Google  Meet などのユニファイドコミュニケーションツールの導入が企業に進んでいるため、それらの付帯サービスとして電話通話機能を追加するケースが多い、というのがその一つです。

これらのユニファイドコミュニケーションツールはすべてダイヤルインタイプなので、従来と同じワークスタイルが取れなくなることがあり、運用に負担が増える事があります。

グループタイプの場合でも、完全に従来型のPBXを模したシステムは少なく、多少の運用増加は免れないと考えます。

しかしながら、日本国内でグループタイプで提供されているクラウド電話交換サービスはそうではありません。

こちらのタイプのサービスは必ず日本製であり、日本のレガシーPBXを基礎として研究開発されています。そのため、二ーズを把握しており、運用負荷をなるべく低くするよう設計されています。利用者からも好評を得ることに成功しています。

選択肢は少ないながらも、国内サービス提供業者は、日本企業のニーズに合わせて日々改善に取り組んでいます。

スマートフォンの利用を考慮したクラウドPBXの選択

昨今、従来の電話交換機からのクラウドへの移行を行う場合、必ず考慮したいのがスマートフォンの活用です。

多くの社員はBYODもしくは、社用携帯電話で通信を行うことが一般的になっています。そのため、コストを鑑み、電話交換機の規模を縮小し導入したいと考えることが多くなっています。

スマートフォンを内線電話機として利用することで、リモートワークでの活用を行えるほか、緊急対応(パンデミック、災害時通信制限中の安否確認など)にも活用できます。スマートフォン機能をサポートするかどうかは選択するうえで大きな選択肢といえます。

ただし、スマートフォンにも弱点はあります。使い勝手や目視での運用が変わるため、「慣れ」が必要になります。

従来の電話機では、全ての機能が電話機盤面に表現されており、電話機ランプ明滅によって自分以外の利用者の通話状況を確認できました。

しかし、スマートフォンでは、セキュリティの観点から、常時表示の画面が無く、通話中のランプ明滅もありません。

また、複数者が同時着信時に着信をとれなかった場合、不在着信としてそれぞれのスマートフォンの着信履歴に残りますが、不在着信を誰が対応したのか、対応は完了しているのかを確認するのに手間がかかります。

こういった運用の変化には、利用者の協力が必要となります。

まとめ

電話交換機をクラウド化するにあたり、多くのことを考慮する必要があることがわかると思います。まずは現在利用する電話交換機をどのように利用しているか、確認する必要があります。

日本におけるビジネスでの電話の利用方法は、キャリアと連携した様々なグループ対応業務が存在しています。そういったサービスへの対応状況も含めて検討する必要があるでしょう。

スマートフォン利用に関しても、運用における負担は考慮する必要がありますが、その恩恵は緊急対応にも及ぶため、検討する価値は十分あると考えます。

また、運用面では、現状の利用方法と変わらない運用が行えるサービス選択になってくるケースが多いです。その場合、クラウド電話交換機を扱う国内企業は、日本企業向けのきめ細かい機能を提供していることが多く、有力な選択肢に入ってくるのではないでしょうか。

 

次回は、クラウドPBX導入時のトラブルについて書きます。

執筆担当者プロフィール
高山 智行

高山 智行(日本ビジネスシステムズ株式会社)

入社24年目、パケット音声にまつわる技術をJBSにため込みたいと考えています。 そのため、レガシーPBXからクラウドPBXまた通信端末として電話機やスマホに詳しいです。 WindowsよりLinuxやAsteriskに精通しています。 音声パケット通信のためのネットワーク構成もここに残します。

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