SIerが知るべき電話交換機のこと1

はじめに

SIに関わる方でも、対象が電話となると、電話交換機や電話回線が利用する設備としてのラックシステムやLAN配線などのインフラ準備までは行っても、電話に関わることはしなかった、という方々は多いのではないでしょうか。

私自身もSIerとして長年ITに関わってきましたが、電話に関しては”何か複雑そう”と感じており、積極的に関わりませんでした。

電話交換機は専門業者が存在し、専門性の高い技術で操作を行い、電話回線はキャリアへの難しい申請で行われてきました。そのため、SIerとしてはかかわる必要がなかったというのが理由でしょう。

今回は「SIerが知るべきレガシーPBXのこと」として、SIerのための電話に関して説明します。

レガシー電話交換機

レガシー電話交換機は、電話機と電話交換機を構内ケーブルで接続された、スター構成のネットワークです。 

デジタル電話交換機

交換機はシングルジョブのサーバーに、電話機はドメイン内のPCに、それぞれ見立てることができます。また、構内配線はLAN配線と考えることができます。

SIerが構築してきたネットワークと一番の違いは、シングルジョブで拡張性に制限があることです。電話機の接続数は交換機の物理的な大きさに依存し、電話機パッケージを挿入できる数が電話機を収容できる数になります。

その他の主な特徴です。

  • 着信発信は電話機から行われ、交換機がキャリア回線に向けて通信を行います。
  • 電話機から電話交換機へ「転送」、「録音」などのコマンドを発信できます
    • コマンドは数字、「*」、「#」で行われます。
  • 電話機は一定数のメモリを持っており、電話番号をストアし、短縮でダイヤルすることが可能です。
  • シングルタスクで外界との接続は電話回線だけです
    • 対応できる回線はアナログ、INS64、INS1500 の3種類です。

IP電話機交換機

2000年頃から、大企業を中心に多くの企業で導入されました。また、小型化が行われた2010年あたりからは、中規模企業でもIP電話交換機が利用されてきました。

レガシー電話交換機のとの大きな違いは、電話の接続に電話機パッケージが不要なことです。電話機パッケージの挿入数を気にしなくてもよくなった一方で、電話機利用可能範囲はライセンスで管理するようになり、顧客にとっては割高になりました。

接続は従来と同じスター型ですが、電話専用の構内線の敷設が不要となり、LAN配線との相乗りができるようになりました。

また、電話交換機と電話機の通信は、従来の電話機信号ではなくパケットが使われるようになりました。

発売当初はLANで最大100Mbps、インターネットで最大10Mbpsの通信速度だったことや、H.232 での通信だったため、通信速度が遅いなど、多くの苦労がありました。

IP電話交換機は、現在でも多くの企業で利用されています。

IP電話交換機

LANとの相乗りやVPNを通して、拠点間通話が内線で可能になりましたが、機器の高騰やライセンスが高付加になり導入コストが高くなります。

興味深いのは、レガシ―でもIPでも導入企業は導入工事費がほぼ同額で、デジタルになったからと言って高額になることはありません。設定のインターフェイスがどちらもほぼ同じなことが影響しています。

電話におけるインターネットの利用

インターネットが出現するまで、電話の利用において、長距離定額通信(通話)は高額設備となっていました。まず電話料金は長距離通話が今のように一律でなく、距離換算で請求をされていた時代でした。

そのため、当時は拠点間接続といえば、アナログやINS64の専用線サービスを利用し、通話料をなしくアナログやINS64専用線接続を行っていました。

レガシー電話交換機による拠点間内線接続

インターネットが普及してからしばらくして、IP電話が発売開始となりました。

IP電話は、IP電話交換機と電話機がIPアドレスを用いて通信するため、インターネットがあれば内線通話が可能となりました。

IP電話環境での他拠点内線接続

この当時はブロードバンド技術が確立されおらず、また音声技術も早熟でした。特にデータとの共存では通信遅延やエコー音がランダムに発生しエンジニアを困らせました。

インターネットにおける電話の発着信は050からおこなわれるため、03や06などの一般的な市外局番から始まる電話番号を代表電話として利用できない、というデメリットがありました。

また、2010のサービス開始当初は音質が悪いものでした。ホワイトトイズがひどく、音声が小さく聞こえたため、普及することはありませんでしたが、近年は音質も改善ざれ、携帯電話の音質とほぼ同等になっています。

この20年で多くの変遷を遂げ、技術が確立しつつあります。

最後に

SIerが知るべきPBXのこととして、レガシ電話交換機からのインターネットの活用までかいつまんで説明しました。これら技術の変遷をとらえることで、今日の通信技術への理解を高めることにつながると考えています。

執筆担当者プロフィール
高山 智行

高山 智行(日本ビジネスシステムズ株式会社)

入社24年目、パケット音声にまつわる技術をJBSにため込みたいと考えています。 そのため、レガシーPBXからクラウドPBXまた通信端末として電話機やスマホに詳しいです。 WindowsよりLinuxやAsteriskに精通しています。 音声パケット通信のためのネットワーク構成もここに残します。

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