VMware Cloud on AWS 導入前に確認しておくべき事

はじめに

VMware Cloud on AWS (以後VMCと記載) は、仮想マシンの IP アドレスを変更せずにオンプレミスからクラウドに移行できるため、クラウド移行を考えてる方には非常に良い製品です。

ただ、オンプレミスと異なるクラウド特有の観点での確認を行わないと、ハードウェアやソフトウェアが利用できない事で構成変更が必要となり、期間(費用)の増加等でプロジェクトに大きな影響を与える場合があります。

本記事では、VMC 導入前に確認しておくべき事をご紹介します。

なお、本記事の内容は VMC のみではなく、Azure VMware Solution でも利用できる部分があります。今後、クラウドでの vSphere 基盤導入を検討している方の、スムーズな導入に役立てて頂けますと幸いです。

ユースケースの明確化

ユースケースによって構築すべきシステムは大きく異なり、主に「クラウド移行」「ハイブリッドクラウド(データセンターの拡張)」「災害対策」「モダナイゼーション」のどれかに該当する事が多いかと思います。

クラウド移行の場合、オンプレミス環境が無くなりクラウド環境のみとなりますが、ハイブリッドクラウドの場合ではオンプレミスとクラウド環境の併用となります。

これだけでも、オンプレミス環境の有無が異なり、システム構成が大きく変わりますので、ユースケースは明確にしておく必要があります。

仮想マシンの整理

仮想マシンのリソース確認

VMC 基盤上で稼働させたい仮想マシンリソースの一覧を作成し、必要リソース量の算出を行います。

この際には CPU、Memory、ハードディスクは最低限実施しておくべきです。

仮想マシンに大きいリソースを割り当ててる場合、VMC 基盤のホスト以上の割り当てとなってないか確認が必要です。(先日 128コア、1024GB Memory を搭載した I4i インスタンスがリリースされたため該当するケースは少ないと思いますが)

また、物理ハードウェアに依存するような特殊なリソースを仮想マシンに割り当てているかの確認を行っておき、サポートされていないリソースが無いか確認しておく事もお勧めします。

具体的には、下記 URL に記載されているリソースは VMC 基盤上ではサポートされていないか、制限付きとなっております。

docs.vmware.com

ライセンスの確認

仮想マシンで利用する OS やソフトウェアの一覧を作成し、VMC 基盤上で利用するためにはどのライセンスをどのように購入する必要があるか確認しておく事をお勧めします。

オンプレミスと同様に購入しクラウド環境への持ち込みが可能なのか、Services Provider License Agreement (SPLA)  での購入が必要なのかは対象製品によって異なります。最近ではオンプレミスとクラウドどちらでも利用可能なライセンスを提供している製品もありますので、お使いの製品がどのパターンに該当するか確認します。

また、ライセンス規約は不定期に更新されるため、最新情報を確認し、ライセンス違反とならないように注意する必要があります。

VMware Cloud on AWS Sizerによるホスト台数の算出

ここまで実施すると、VMC 基盤上で動作させたい仮想マシンの総リソース量が算出できるかと思います。

VMware Cloud on AWS Sizer (以後 VMC Sizerと記載)を利用して、ホストタイプと必要なホスト台数の算出を行いシステム構成の規模感を確認します。

VMC Sizer では Quick と高度がありますが、今回のように仮想マシンのリソースとソフトウェアライセンスの確認のみで実施する場合は Quick Sizer で実施しても問題ありません。データベース利用有無やストレージ IOPS 等詳細なデータを取得している場合は高度 Sizer の利用を検討します。

vmc.vmware.com

その他確認しておくと良い事

仮想マシン以外の確認

NFS やロードバランサ等の仮想マシン以外の利用有無や、連携しているシステム有無の確認も重要です。

VMC 導入後に、オンプレミスの機器を利用するのか、AWS サービスを利用するのか、でシステム構成が異なるため、事前に確認しておく事をお勧めします。

連携しているシステムが有る場合は、どのルートで通信させるか(インターネット or 専用線)等の検討が必要となります。

非機能要件の確認

可用性(SLA)、セキュリティ、移行、バックアップ、監視等…確認すべき事項は他にもあります。

SLA 要件を満たせるか確認が必要であり、満たせない場合は対象システムに対する要件緩和が必要になります。(VMC であればストレッチクラスタ利用時の 99.99% が最大になります)

セキュリティに関してはクラウド環境に代わる事によって、法律やポリシーに変更がないか、コンプライアンス認証に準拠できるか(しているか)を確認する必要があります。

移行に関しては、VMware HCX を利用するとオンライン移行が可能なため要件をクリアできるケースが多いです。また、バックアップや監視等も VMC に合わせた設計をする事で要件をクリアできるケースがほとんどであり、VMC 導入のノックアウトファクターとなる事は少ないです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

本記事では確認しておくべき事を簡単に記載させていただきました。

事前に網羅的に確認しておく事で、検討すべき事項の洗い出しができ導入がスムーズになればと考えております。

執筆担当者プロフィール
佐藤 大

佐藤 大(日本ビジネスシステムズ株式会社)

ハイブリッドクラウド本部に所属 エンジニア歴17年、サーバ/ストレージ/ネットワークと広く浅く担当し、ここ数年はクラウドをメインで実施

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