こんにちは、JBSの和村です。
2026年6月1日からアメリカ・サンフランシスコで開催されているSnowflake Summit 26もついに最終日となりました。
本記事では最終日に聴講したセッションの内容をお届けします!
※記事中のセッション資料は掲載許可を得ています。画像は2026年6月10日に追加しました。
Day1~3の様子についてもJBSメンバーがレポートしています!
- Snowflake Summit 2026 現地レポート Day1 - JBS Tech Blog
- Snowflake Summit 2026 現地レポート Day2 - JBS Tech Blog
- Snowflake Summit 2026 現地レポート Day3 - JBS Tech Blog
- An AI-Native Operating Model: Lessons from Building Snowflake Snowflake CoCo
- How Canva Uses Event-Driven APIs and Scalable Pipelines with Snowflake OpenFlow
- Japan Wrap-Up Session
- さいごに
An AI-Native Operating Model: Lessons from Building Snowflake Snowflake CoCo
登壇したのは、SnowflakeのDesignチームを率いるKathleen氏と、CoCo(Snowflakeの新しいコーディングエージェント)を実際に作り上げたUmesh氏です。
「Transforming Your Product Organization to Build with AI」は、技術的な話というより、組織と人がどうAIと向き合うかを正面から語るセッションでした。
SnowflakeがAIネイティブな組織に変わるまでに経た9段階のプロセスと、そのプロセスを実際に体現しながらCoCoを0から作った話を、本記事では7つのキーワードに分けて整理しました。
AIを導入しても変わらない会社が多い理由
Kathleen氏はIntelの元CEO Andy・Groveが語った9段階の変革フレームワークを引用し、AIを導入しても組織が変わらない理由を整理しました。



まず「戦略的変曲点」として、AIの進化速度が既存の開発サイクルをすでに超えていること。問題は、その次の段階にあると言います。
「AIに抵抗しているわけじゃない。でも、自分が得意なものを失いたくない。」
これが多くのメンバーの本音だとKathleen氏は説明していました。デザイナーはアーティファクト(成果物)を作る人としても自分のアイデンティティを守ろうとし、エンジニアは「安定したコードを書く職人」であることにプライドを持っています。AIへの抵抗ではなく、変化への不安と自分の存在意義への問いが、変革を鈍らせているという指摘です。
また、「成功の慣性」も変革を阻む要因として挙げられました。うまくいっている会社ほど「なぜ今変える必要があるのか」という問いが生まれやすいのです。しかし変革のウィンドウには期限があり、変革できないまま波が去れば取り戻せないと述べられていました。
「実験フェーズ」がすべての鍵
9段階の中でKathleen氏が最も強調したのが第5段階:実験です。
やり方はシンプルで、CoCo、Claude、Cursorなどのツールをチームに渡して、標準ルールなしに自由にやらせます。「最もAIネイティブな人が自然とゴールデンパスを見つける」という考え方で、そこから生まれたインサイトを標準へと昇華させていくとのことです。
CoCoの社内導入がその好例として紹介されました。最初の導入時、利用率はわずか16%、しかし6か月後には97%に達したといいます。強制でも業務化でもなく、「使ってみたら仕事が速くなった」という体験が口コミで広がった結果です。
全員が「フルスタッククリエイター」になる
変革が進むと、役割の境界が溶けていくとKathleen氏は言います。
従来は、「PM→デザイン→エンジニア」と順番に渡していたバトンが、AIの登場で全員が同時に動けるチームへと変わっていきました。PMはプロトタイプを作り、デザイナーはコードを書き、エンジニアはUXの判断を下す。セッションではこれを「フルスタッククリエイター」と表現していました。
ただし、役割がなくなるわけではないとも強調されました。
- PM(プロダクトマネージャー): 書類を作る仕事から、「課題の定義」や「AIモデルにどんな意思決定をさせるかという意図の設計」に集中する
- エンジニア: 安定したコードをじっくり書くマインドから、「2週間ごとにコードを書き換え、ダメなら捨てる」という動的でスピーディーな開発への適応(最初は強い心理的抵抗があります)
- デザイナー: 画面の美しさだけでなく、ユーザーの意図、行動、データがどう交差するかを俯瞰する「システム思考」が求められる
AIが実行を担うからこそ、人間の判断の質がより問われるようになるという話です。

CoCoはなぜ生まれたか ーー 「visitor」ではなく「resident」として
続いてUmesh氏が、CoCoの開発背景を語りました。
CursorやClaude Codeなどのツールを社内で試した際、明確な限界が見えたと言います。
「それらのツールはコードには強い。でもデータのことがわかっていない」
Snowflakeのセキュリティモデル、RBACの構造、スキーマやウェアハウスの概念 ーー 既存のAIツールはそれらを理解できず、余計なトークンを消費し、ループに陥り、エンタープライズのガバナンス要件も満たせなかったとのことです。
そこで出た結論が「Snowflakeのプラットフォームに住まわせるエージェントを作る」というものでした。外から接続する「visitor」ではなく、Snowflake自体の中に深く組み込まれた「resident」として設計する必要があったと述べられていました。
「要件定義書は書かなかった」ーー 開発プロセスの実態
CoCoの開発プロセスとして紹介されたのは、従来の常識とは大きく異なるものでした。
- 要件定義書は一切書かなかった
- 毎週、動くプロトタイプでリーダーに見せた
- 最初の3か月で、プロダクトを3回完全に作り直した
- コードへの執着を持たなかった(多くはAI生成)
「変更したいことがあったら、Jiraに起票して待つより、自分でリポジトリを直す方が速い」ーー デザイナーも、ソリューションエンジニアも、CEOでさえPRを出すようになったと紹介されていました。
社内ユーザーの集め方も特徴的でした。全社的な義務化は一切行わず、「本当に困っていて、毎日フィードバックをくれる人」だけをSlackで探したとのことです。口コミで広まった結果、最終的に数千人規模の社内利用に至ったといいます。「この製品に本物の価値があると確信できたのは、問題に最も近い人たちが自発的に使い始めたとき」というのがUmesh氏の言葉です。
13分でデータパイプラインを本番環境へ
デモでは、「Summit参加者2万人の合成データセットを作り、DBTパイプラインでPIIを除去し、Streamlitダッシュボードを作成してデプロイ」という複合タスクをCoCoに依頼する様子が披露されました。
CoCoはまず計画モードに入り、Snowflake環境のスキーマ・権限・ウェハウス構成を確認。計画を定時して承認を得てから実行しました。
所要時間は約13分。
「このタスクは通常1週間~数カ月かかる」とUmesh氏は説明しましたが、技術者でない営業や財務担当者でも、「どんなデータが必要か」「どんな見た目にしたいか」さえわかれば同じフローで動けるようになるーーそうした可能性を示すデモでした。
セッションの締めくくり:AIネイティブへの3つの学び
Umesh氏はセッションの最後に、CoCoを作りながら得た3つの学びを挙げていました。
- 小さく、深く始める
- 最初から全ユーザー向けに作ろうとしない
- 本当に困っていて、毎日フィードバックをくれる少数のユーザーを見つけ、その人たちが「これは手放せない」と感じるものを作る
- 動くプロトタイプこそが仕様書
- 要件定義書やドキュメントではなく、実際に動くものを見せて判断してもらう
- 「学ぶために計画するな、学ぶために作れ(Build to learn)」
- コードの価値が下がった(安く早く作れるようになった)現代では、計画に時間をかけることはむしろコスト高になると強調
- AIの速度に合わせてリズムを変える
- 週次でのイテレーションが基本
- 2週間以上判断を引き延ばすとそれだけで遅れが生じる
- 新しいモデルや技術が出たら、古い実装に固執せず乗り換える判断が必要
セッションを通して特に心に響いたのが、「組織がこれまで大事にしてきた慣習やプライド、いつもの業務プロセスを思い切って変えていく勇気」です。長年慣れ親しんだやり方や、自分のスキルへの誇りがあるからこそ、そこを変えるのって本当に勇気が要ることだと思います。
でも、Snowflakeはそれを「全員がフルスタッククリエイターになる」という次のステップへ昇華させました。
技術としてのAI(CortexやCopilot、CoCo)に正しいデータのコンテキストを教え込み、私たち人間はこれまでのやり方を変える「変革の勇気」を持つ。この両輪が揃って初めて、AIは期待・実験フェーズから、ビジネスの本当のコアエンジンになるだろうと感じました。
突如現れたCoCo。その開発背景を知り、大変興味深かったです。
How Canva Uses Event-Driven APIs and Scalable Pipelines with Snowflake OpenFlow
SnowflakeのOpenFlowプロダクトリードのSam Lochterman氏と、CanvaのアナリティクスエンジニアInam氏が登壇し、OpenFlowの最新アップデートとCanvaでの活用事例が紹介されました。
今回のアップデートの全体像
セッションで紹介された主な新機能・アップデートは以下の3つです。
- OpenFlow Endpoints(今月末GA)
- OpenFlow API(Private Preview)
- Data Connectivity Proxy(DCP)(数週間後にPrivate Preview、7〜8月GA予定)
OpenFlow Endpoints ーー Webhookでリアルタイム受信
これまでOpenFlowはスケジュール実行のバッチ処理が基本でした。OpenFlow EndpointsはHTTPエンドポイントを提供し、外部ソースからWebhookでデータをプッシュさせることで、データ到達をほぼリアルタイム化します。
Canvaのセッションではこの機能が実際のB2Bセールスパイプラインに適用されており、リードがWebフォームや各種チャネルから届くたびに即座にOpenFlowへ流れ込む仕組みを実現しています。今月末にGAを迎えるとのことです。
OpenFlow API ーー 「SQLで書けるOpenFlow」でCI/CDが現実に
最も注目度の高い発表がこのOpenFlow APIです。これまでOpenFlowの設定はGUIから行う必要がありましたが、SnowflakeのSQLおよびNotebook上から直接操作できるようになりました。
デモではPostgresのCDC(変更データキャプチャ)コネクターを数コマンドで作成・起動し、約5分でデータのレプリケーションが完了する様子が披露されました。
主な特徴は以下の通りです。
- コネクター設定をJSONファイルとしてSnowflake StageやGitで管理できるため、バージョン管理・CI/CDへの組み込みが可能
- 設定ペイロードに機密情報を含めず、SnowflakeのSecretsや外部シークレットマネージャーを参照するセキュアな設計
- Terraform対応も近日予定。より宣言的な記述でコネクター管理が実現される見込み
- 安定したEgress IPレンジを提供し、ネットワーク担当者への許可申請も容易に
現在Private Previewで、Canvaチームはこれを活用したCI/CDパイプラインの構築を次のステップとして計画していると紹介されていました。

Data Connectivity Proxy ーー オンプレ・クロスクラウド接続をゼロトラストで
オンプレミスやプライベートなクラウド環境のデータソースへの接続を、ファイアウォールのインバウンドポートを開けることなく実現する新機能です。CloudflareトンネルやTailscaleに近いゼロトラストネットワーキングの考え方を採用しています。
動作の仕組みは以下の通りです。
- DCPクライアントをDockerまたはVM上でお客様環境に配置
- アウトバウンド通信のみでSnowflakeとの双方向トンネルを確立
- SnowflakeのIDで強力に認証され、通信は最新の暗号化プロトコルで保護
- コネクター側の設定変更は不要で、JDBCのURLをそのまま使用可能
数週間後にPrivate Previewを開始し、7月末〜8月初旬のGA(全3クラウド対応)を目指しているとのことです。
Canvaの活用事例:3日→5分への劇的改善
これらの機能を組み合わせて実際に成果を出した事例として、CanvaのB2Bセールスパイプラインが紹介されました。
旧アーキテクチャでは、リードがSalesforceに届くまで最大3日かかることもありました。OpenFlow Endpointsを軸に再設計したパイプラインでは、平均5分以内での到達を実現。エンジニアへの問い合わせチケットもゼロになり、新ソースの追加も数ヶ月から半日に短縮されたとのことです。
今回のアップデートで、OpenFlowは「GUIで設定するETLツール」から「コードで管理・自動化できるデータ統合プラットフォーム」へと大きく進化しました。特にOpenFlow APIによるCI/CD対応は、データエンジニアリングの現場での運用を根本から変えうるアップデートと言えます。
Japan Wrap-Up Session
最後に、Snowflake Summitの締めくくりとして「Japan Wrap-up Session」が行われました!
Snowflake合同会社の浮田社長から、今回のサミット全体の振り返りがありました。参加者は世界で2万人以上、APJからは1,000名以上が集まったそうですが、その中でも日本からの参加者が400名超とAPJ最多だったとのこと。改めてその熱量の高さを感じました。
その後のパネルセッションでは、スノーフレークの創業者Benoit Dageville氏と、オブザーバビリティツール「Observe」の創業者であるJeremy Burton氏が登壇。今年のテーマ「Making AI Real for Business」に沿って、スノーフレークがデータプラットフォームから"インテリジェンス・プラットフォーム"へと進化しようとしている背景が語られました。
最後にSnowflakeによる新機能のキャッチアップや、今回のサミットで発表された数多くの新機能や、その中でも注目すべきピックアップ要素を網羅してインプットすることができました!
さいごに

4日間行われたサミットも本日が最終日でした!
Opening Keynoteからはじまり、さまざまなセッションやブースを回り、日本から参加された多くの方々や、多様な企業の皆さんと交流することができ、本当に刺激的で充実した4日間でした。
帰国後もどんどん新機能のキャッチアップに励みたいと思います!