JBS × Avanade テックブログ|AIエージェント時代、事業部門と経営層はどう変わるべきか ── JBS・アバナード・日本マイクロソフト3社対談【Part1】

2026/6/17にJBS・アバナード株式会社(アバナード)・日本マイクロソフト株式会社(MS)の三社共催セミナー(オンサイト)を開催いたしました。

このセミナーでは、「真の生産性革命は "制御" から始まる ― Microsoft Agent 365 が拓くコントロール可能な AI 自律化戦略 ―」と題しまして、生成AI活用が進む中、多くの企業が直面している、以下の課題感を中心に、JBS、アバナード、マイクロソフトの3社がそれぞれの立場から、企業のAIエージェント活用による業務変革促進や、Microsoft Agent 365 および Microsoft Entra Agent ID といった最新のテクノロジーアップデートについて共有しました。

  • 全社で増えていくAIエージェント、知らないところで使われているAIエージェント、これらをどう統制管理するのか
  • 戦略、ガバナンス、セキュリティ、導入、展開、運用をどのように計画し、実行するのが良いのか

また、当日は以下登壇者において、AIエージェント活用リアルを、「成功指標」から「事業部門・開発現場の変化」、そして「経営層に求められる覚悟」まで、忌憚のない議論をパネルディスカッション形式で行いました。

  • 日本ビジネスシステムズ株式会社
    • 執行役員:伊藤 英啓(JBS 伊藤)
  • アバナード株式会社
    • Advisory Experience 事業本部長 シニアディレクター:楠 貴裕(アバナード 楠)
  • 日本マイクロソフト株式会社
    • クラウド&AIソリューション事業本部 セキュリティ統括本部 データセキュリティ技術本部 本部長:一瀬 幹泰(MS 一瀬)
  • 株式会社ネクストスケープ
    • 代表取締役社長 兼 日本ビジネスシステムズ株式会社 執行役員:小杉 智(ネクストスケープ 小杉)※モデレータを担当

今回は約100人のご来場者の皆様から大変ご好評をいただいた、パネルディスカッションの内容を全3回に分けて、採録してお届けします。

後続記事と合わせてご覧ください。

テーマ1:AIエージェント活用の「成功指標」とは何か

ネクストスケープ 小杉:

「AIエージェントを使えば業務の生産性が上がる」「これから労働人口が減っていく日本では、AIエージェントを活用しないと事業の存続性すら危うい」——そんな漠然とした危機感は、皆さんもお持ちかもしれません。ただ、実際に「入れてよかった」と言えるようにならないと活用は広がっていきませんし、逆に無駄なエージェントが増えて、思わぬトークンコストがかさんでいる……という経験をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、統制の話に入る前に、まず「AIエージェントを何のためにどう入れたら、どうなったら成功と言えるのか」を、お三方に伺いたいと思います。最初にマイクロソフトの一瀬さん、社内でAIエージェントを導入してどんな効果があったか、そしてそれを何をもって「成功」と捉えられたのか、教えてください。

「AIをどれだけ使っているか」を人事評価に組み込む

MS 一瀬:

マネジメントレイヤーから見ると、今かなり強いプレッシャーになっているのが、当社が年2回実施している従業員意識調査です。この中に最近、「あなたのチームはAIを使ってビジネスプロセスの変革に取り組んでいますか」という設問が加わりました。従業員は「うちのチームは全然やっていないな」と思えば1〜3点、「かなりやっているぞ」と思えば7点、というふうに自己評価をつけます。

ポイントは、これがチームや組織単位のスコアとして可視化されてしまうことです。「あのチームはAI活用が進んでいない」「あの組織はまだまだ旧態依然だ」といった形で数値が表に出てしまう。これが最近かなり効いていて、我々自身も使わざるを得ない状況になっています。

例えば半期のチームの振り返り会では、「自分で考えずに、AIに作らせてください」という方針にしました。パワーポイントやワードで自分の成果を振り返り、ハイライトやローライト、学び、改善アイデアをAIにまとめさせる。それまでAIを本気で使ったことがなかったメンバーも、どんなプロンプトを投げればいい結果が返ってくるか、どのツールとアウトプットを組み合わせればいいか、いろいろ試行錯誤してくれました。

その中で見えてきたのは、まず「当たり前かもしれませんが、普段から明文化していないと、予定表やメールだけからでは成果を作ってくれない」ということ。それから、ハルシネーションもあって、自分がほとんど関わっていないのに「これはあなたの成果です」という形でまとめられてしまうこともあります。うまくいったのは二段階方式です。最初に箇条書きで複数のソースから材料をラフに出させたうえで、それをまたパワーポイントにまとめ直す。この二段階でやると、いいレポートに仕上がる実感がありました。こうした取り組みを通じて、社内に「取り組まないとまずい」という空気が広がってきたのが大きかったと思います。

ネクストスケープ 小杉:

それで、実際にどれくらい効果があったと、マネジメントレイヤーでは認識されているものなんですか。

MS 一瀬:

業務改善は日々言われていますが、端的な例で言うと、これまで技術営業の組織では「マネージャー1人につき部下は8人ぐらいが適正」と言われていたのが、指針として12人になるなどの変化もあります。「マネージャーの負担もAIで楽になるだろうから、1人のマネージャーが見られる人数も増えるはずだ」という、かなりドラスティックな考え方で「AIを使って頑張れ」という話になっているんです。AIの効果による所だけではないですが、具体的な人数として成果が出てきている例ではあります。

ネクストスケープ 小杉:

なるほど、なかなかショッキングですね。部下の数が今までより増えるのが成功指標の一つになっている、と。

MS 一瀬:

そうですね。マネジメントに必要な工数が効率化されて減るだろうと。一例としてマネージャーが見られる人数が8人から12人、つまり1.5倍くらいになる、という考え方です。(注:マイクロソフト社内においても、組織の成熟度やロールの変化度合いなどによって一概には言えない話ですが。)

ネクストスケープ 小杉:

非常に興味深いですね。AIエージェントやAIそのものの指標というより、それを「人の評価」というところにKPIとして落とし込んでいる、という考え方かなと思います。ありがとうございます。では、アバナードの楠さん、いかがですか。

AIエージェントを「一人の人材」として評価する

アバナード 楠:

今のお話は、どちらかというと「利用をモチベートするための指標を作って回した」というお話だと思っていて、それはすごく大事だと思います。私が以前お話ししたのは、エージェントを「人」の一人として扱う、という考え方なんですね。

普通、人がいれば人事考課でちゃんと評価して、プロモーションや昇給を判断します。それと同じ視点でエージェントを評価すればいいんじゃないか、と思っています。単純に考えると「何回動いたか」「アウトプットを何個出したか」という指標になりがちですが、それはあくまで仮説にすぎません。

実際には、ある人の営業成績が良かった、といった人事考課に必要な数値があるはずです。「前年と比べて、これを使ったから何パーセント向上したか」を、人事考課の中で出してもらえばいい。それがちゃんと出せている人は評価もされますし、実際にエージェントがどれだけ寄与したかという数字も出てくる。評価の指標を人と合わせてしまえば、数字が取れて、それに合わせてどんどん改善していける、というのが私の考えです。

ネクストスケープ 小杉:

AIエージェントを「人」として捉えて、人と同じように人事評価をしていく、と。その場合、AIエージェントの目標設定はどうなるんでしょうか。

アバナード 楠:

これが難しいところです。作業効率アップ、つまり時間をどれだけ圧縮したか、はわかりやすく数値化できます。ただ「考えるサポートをしてくれた」「新しい発想を生むために、別軸のアイデアをくれた」といった部分を評価するのは非常に難しい。それでも結果としては、例えば営業の人であれば営業成績に紐づくわけです。

過程がどれだけ素晴らしかったかを表現しにくいので、最終的には「何パーセントぐらい」という形で、本人の判断も交えながら数字で表現してもらう、ということになるのかなと思います。

ネクストスケープ 小杉:

なるほど。そういう意味では、エージェント単体を評価するだけでなく、エージェントとその人を含めたチーム、あるいは部署として、そのチーム・部署の目標と結びつけて評価していく、という考え方ですね。では伊藤さん、JBSとしての成功指標はいかがですか。

「空いた時間」をどこに使うか

JBS 伊藤:

私は成功指標が2つあると思っています。

1つ目は「事業の成長」です。当たり前かもしれませんが、AIを活用して事務作業を効率化しましょう、という話はお客様とお話ししていてもよく出てきます。「AIを入れて3割改善できた」という言い方はよくされるのですが、では効率化して浮いた3割で何か新しいことに取り組めたか、そしてそこで結果が出たかどうか。

今まで手が回らずやれていなかったことに挑戦できた、新しいお客様とコミュニケーションする時間が増え、結果としてビジネスが伸びた——ここまで来て初めて、効率化した意味が出てくると思うんです。今は「あるものをこなすために効率化する」というAIの使い方が多いと感じていて、そこが目的化しているお客様には「そこがゴールじゃなくて、そこがスタートですよね」というお話をよくします。

2つ目は「組織の変化」です。これはマイクロソフトさんのお話とも通じますが、実体験として、弊社の中でも「AIを使え」という号令はかけているものの、現場のメンバーになるほど「どう使えばいいんだっけ」「使っていいんだっけ」という空気がまだ残っています。そうした中で、マネジメントが率先して使うと「マネジメントも使っているんだから自分たちも使わなきゃ」という文化が生まれます。

みんなが使い始めると「こんなふうにできるんだ」「今度はこういうデータを食わせたらどうなるだろう」と浸透していく。それによって、先ほどの「1人のマネージャーが見られる人数が増える」という話にもつながっていきます。組織の中でのコミュニケーションや、これまでかかっていた時間の使い方、日々のオペレーションへの浸透度合い——組織自体の運用の仕方が変わっていくこと自体が、一つの指標になるのではと思います。

ネクストスケープ 小杉:

まとめると、AIエージェントを活用することで生まれた時間を、より事業成長の方に向けていけるかどうかが成功指標になり得る、と。そういう意味では、AIエージェントを使うにあたっては「どれくらい時間を空けるか」を目標設定に入れなければいけない、ということですね。

「マネージャー1人が見る人数」は本当に増えるのか

ネクストスケープ 小杉:

ここまで、三者三様の成功指標をいただきましたが、「1人当たりのマネジメントできる量が増える」というのは、なかなか衝撃的なお話ですね。

MS 一瀬:

そうですね。ここは行ったり来たりがあると思っていて。AIで効率化できるだろうということで、報告書の類もAIツールで整えてから出す、というように楽になっている部分は確かにあります。ただ、どこかのタイミングで「もっと人と人とのケアを大事にしなさい」という揺り戻しも来ると思うんです。そうやって行ったり来たりしながら、最終的な効率が上がっていき、見られる人数が増えていく方向に進んでいく可能性はありますね。

ネクストスケープ 小杉:

認知の「マジックナンバー7」みたいな話もある中で、12人までいくのか、と。

MS 一瀬:

そうなんです。チームのサイズとして、「ピザを8等分で分けられるのが、適切なチームの限界だ」というような話もあるくらいで、それを超えると目が届かなくなる人も出てくる。ここはいろいろ議論があると思います。とはいえ、AIで効率化できる人は増え、プロセスはどんどん効率化していくでしょうし、逆に新しい部署などチーム一体となってケアし合わなければいけないところは、マネジメントとの割合を見直す必要も出てくるでしょう。

すでに組織化されたサポート部門などでは、1人当たり20人、40人ということもあり得ると思います。ビジネスの難易度やケアの必要性も加味しながら、変わってくるところだとは思いますが、AIによって効率化できる部分はほとんど効率化していくというのは、本社側でも考えられているところです。

まとめ

成功指標については、「AI活用度合いを人事評価に組み込む」(MS 一ノ瀬)、「エージェントを一人の人材として評価する」(アバナード 楠)、「効率化で生まれた時間を事業成長に振り向けられているか」(JBS 伊藤)と、アプローチは三者三様でした。

共通していたのは、AIそのものの稼働率ではなく、「人・組織の評価軸」に落とし込んで初めて成果が測れるという視点です。

次回は、パネルディスカッションの中盤にあたる、「テーマ2:AIエージェント時代、事業部門・開発現場はどう変わるか」についてお届けします。

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本パネルディスカッションで語られたAIエージェントのガバナンス・統制についての背景や考え方、取り組みは、以下に関連記事をまとめておりますのであわせてご覧ください。

【JBS×Avanade】AIエージェント活用に向けたセキュリティ&ガバナンス 連載開始!(https://blog.jbs.co.jp/entry/agent-governance-series)

執筆担当者プロフィール
窪田 晃太

窪田 晃太(日本ビジネスシステムズ株式会社)

AIコンサルティング部にてAIツールを中心としたお客様の課題解決、業務改革を中心に活動中 趣味はドラム演奏、居酒屋

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