Microsoft Fabric の データ エージェントに、取得したデータを Python で分析できる コード インタープリター機能が追加されました。
これまでのデータ エージェントは、接続したデータ ソースへ自然言語で質問し、SQL、DAX、KQL、GQL などを使ってデータを取得することが中心でした。コード インタープリターを追加すると、取得結果を安全なサンドボックス Python 環境へ渡し、計算、統計分析、相関分析、予測、グラフ作成まで自然言語で依頼できるようになります。
本記事では、Fabric データ エージェントのコード インタープリターについて、できることや実際の使い方を交えながら紹介します。
これまでの連載
Microsoft Fabric × Copilot に関するこれまでの連載記事は、以下にまとめています。
コード インタープリターの概要
コード インタープリターは、Microsoft Fabric のデータ エージェントに、取得したデータを分析するためのセキュリティで保護されたサンドボックス Python 環境を追加するツールです。
ユーザーは Python コードを自分で記述する必要がありません。自然言語で質問すると、データ エージェントが接続済みデータ ソースから必要なデータを取得し、Python コードを生成・実行して、分析結果や可視化を回答します。
生成された Python コード、入力、出力、グラフは実行手順から確認できるため、どのような処理で結果が作られたかを検証できます。
主な機能は以下のとおりです。
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| データ分析 | データ ソースから取得した結果を Python で追加分析する |
| 数学計算 | 比率、差分、統計量など、クエリだけでは表現しにくい計算を実行する |
| 相関分析 | 複数列の関係を分析し、相関係数やヒートマップを作成する |
| 予測 | 取得した時系列データを使って将来値を予測する |
| 可視化 | 折れ線グラフ、散布図、ヒートマップなどの Python ビジュアルを生成する |
| 複数ソースの結果分析 | 複数の接続先から得た結果を組み合わせて分析する |
実際の使い方
ここでは、既存の Fabric データ エージェントにコード インタープリターを追加し、自然言語で分析を依頼する基本的な流れを紹介します。
※以降、データエージェントが読み込むデータは、著者が作成した架空のサンプルデータを使用します。
コード インタープリターを追加する
対象のデータ エージェントを開き、[ツール]タブから[コード インタープリターの追加]を選択します。確認ダイアログで[確認]を選択すると、データ エージェントでコード インタープリターを利用できるようになります。

既存のチャットで初めて利用する場合は、追加したツールが会話に反映されるよう、新しいチャットを開始するか、既存スレッドをクリアします。
グラフを作成する
たとえば、売上データが接続されたデータ エージェントに、次のように質問します。
過去5年間の売上推移を月別に集計し、前年比とあわせて折れ線グラフで表示してください。

データ エージェントは、まず接続先から質問に必要なデータを取得します。その後、コード インタープリターへ結果を渡し、Python で集計やグラフ作成を実行します。
クエリ結果を表で返すだけでなく、その結果をさらに加工して可視化できる点が、コード インタープリターの特徴です。
相関関係を分析する
複数の指標がどのように関係しているかを確認する場合は、次のように依頼できます。
「顧客の利用期間、月額利用額、解約リスクの相関関係を分析し、散布図と相関ヒートマップを作成してください。」

データ エージェントが取得した値を Python で分析するため、自然言語によるデータ検索から一歩進んだ探索的な分析が可能になります。
将来値を予測する
時系列データを使い、予測結果と傾向を確認することもできます。
「過去3年間の売上データに基づいて次の四半期の売上を予測し、実績と予測を同じグラフに表示してください。」

予測結果は AI が生成した分析結果です。業務判断に利用する場合は、前提条件、対象期間、欠損値の扱い、生成された Python コードを確認します。
コード インタープリター追加前後の違い
コード インタープリターの追加によって、データ エージェントでできることがどのように変わるのか、主な違いを以下にまとめます。
| 観点 | 追加前 | 追加後 |
|---|---|---|
| 主な処理 | データ ソースへの問い合わせと回答生成 | 取得結果に対する Python 分析を追加 |
| 計算 | 接続先のクエリ エンジンで処理 | Python による追加計算が可能 |
| 分析 | 集計結果の取得が中心 | 相関、予測、複数結果の組み合わせに対応 |
| 表示 | 主にテキストや表 | Python によるグラフやヒートマップを生成 |
| 確認方法 | 生成クエリや回答を確認 | 生成 Python コード、入力、出力、ビジュアルを確認 |
利用シーンとメリット
利用シーン
- 売上や利用件数の時系列推移をグラフ化したい場合
- 複数指標の相関関係や傾向を確認したい場合
- 過去データを使って将来値を予測したい場合
- 複数のデータ ソースから取得した結果を組み合わせて分析したい場合
- SQL や Python を直接記述せず、自然言語で探索的なデータ分析を行いたい場合
メリット
- 自然言語で Python 分析を実行できるため、利用者がコードを記述する必要がない
- データ取得と分析を一つの会話で完結でき、別の分析環境へデータを移す手間を減らせる
- 可視化まで自動生成でき、傾向や関係性を把握しやすい
- 生成コードと実行結果を確認でき、分析プロセスを検証しやすい
- エージェント レベルの指示により、コード インタープリターを使う場面や回答形式をガイドできる
注意点
コード インタープリターは便利な機能ですが、利用にあたってはいくつか注意点があります。
- コード インタープリターはプレビュー機能であり、提供条件が変更される可能性がある
- 有料の Fabric 容量 F2 以上、または Fabric を有効化した Power BI Premium 容量 P1 以上が必要である
- Fabric データ エージェントの要件に沿って、AI のクロスジオ処理とクロスジオ格納を有効にする必要がある
- 対象のデータ ソースに対する読み取りアクセス権が必要である
- 対応データ ソースは、ウェアハウス、レイクハウス、Power BI セマンティック モデル、KQL データベース、オントロジーである
- 生成された分析、計算、予測、グラフは必ずしも正しいとは限らないため、生成コード、入力データ、出力結果を人が確認する必要がある
- 単純な集計やデータ取得まで常に Python で再処理すると、処理が複雑になる場合がある。データ ソースのクエリだけで解決できる質問と、コード インタープリターが必要な分析を分けて設計する必要がある。
まとめ
Fabric データ エージェントのコード インタープリターは、自然言語によるデータ取得に、Python を使った計算、分析、予測、可視化を追加する機能です。
「データを探して回答する」だけでなく、「取得したデータを分析し、グラフで分かりやすく示す」ところまで、ひとつの会話の中で進められるようになります。
一方で、すべての質問にコード インタープリターが必要なわけではありません。単純集計はデータ ソース側のクエリを優先し、相関分析、予測、複雑な計算、可視化が必要な場面で活用する設計が重要です。
Fabric データ エージェントを、データ検索の窓口から対話型の分析アシスタントへ広げたい方は、ぜひ検証してみてください。
おまけ(Copilot Chat による本記事の要約)
Microsoft Fabric のデータ エージェントに追加された「コード インタープリター」は、取得したデータをセキュリティで保護されたサンドボックス Python 環境で分析できるプレビュー機能です。
自然言語で質問するだけで、データ エージェントが必要なデータを取得し、Python コードを生成・実行して、計算、相関分析、予測、グラフ作成などを行います。
生成された Python コード、入力、出力、ビジュアルは実行手順から確認できるため、分析結果の検証やトラブルシューティングにも利用できます。
利用には対応する Fabric 容量、テナント設定、データ ソースへの読み取り権限が必要です。また、プレビュー機能であることと、AI が生成した分析結果を人が確認する必要がある点には注意が必要です。
コード インタープリターにより、Fabric データ エージェントは自然言語でデータを検索するだけでなく、取得結果をその場で分析・可視化する対話型の分析アシスタントとして活用できます。
廣川 太一(日本ビジネスシステムズ株式会社)
AIトランスフォーメーション事業本部AIテクノロジー推進部所属。 Microsoft Fabric、SnowflakeのデータをAIに連携し誰でもデータ探索ができるよう活動中。 新潟出身の優しい筋肉。
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