昨年からMicrosoft×生成AIというテーマでシーズン2まで連載を実施しておりましたが、シーズン3として連載を再開いたします。
前回は「Microsoft 365 Copilot」を連載テーマの中心としておりましたが、シーズン3ではさらにCopilot Agents、Copilot in Power Platformについてもテーマとして広げていきます。
合計9名の執筆メンバーによる連載となり、引き続き週2回の投稿をしていく予定となります。ぜひお楽しみに!
シーズン3初回となる今回は、Copilot Studioエージェントビルダーの機能を紹介しながら実際にエージェントを作成してみます。
Copilot Studioエージェントビルダーを使ってみたい方、AIエージェントに興味がある方はぜひご覧ください。
これまでの連載
これまでの連載記事一覧はこちらの記事にまとめておりますので、過去の連載を確認されたい方はこちらの記載をご参照ください。
Copilot Studioエージェントビルダーの概要
Copilot Studio エージェントビルダーは、自然言語のみでコードを書くことなく業務に特化したAIエージェントを作成できるツールです。Microsoft 365 Copilotと業務データを連携することで、特定のタスクや業務に特化したAIエージェントを作成し業務効率を向上させることができます。
Copilot Studio エージェントビルダーは、Microsoft 365 Copilotの画面より選択することが可能です。チャット画面右側「エージェントの入手」「エージェントの作成」を選択することで入手と作成が可能になります。
今回は、エージェントの作成から実際にAIエージェントを作成するところまでを実践してみたいと思います。
AIエージェントの作成
チャット画面右側から「エージェントの作成」を選択すると、Copilot Studioエージェントビルダーが起動します。
上側のタブで作成方法を切り替えることができ、[説明]ではAIとチャットでやりとりをしながらエージェントを作成することができます。どのようなエージェントを作成したいかを伝えることで、エージェント名や設定する指示文を代わりに考えてもらうことができます
一方で、[構成]タブを選択するとエージェントの名前や説明、指示文を自身で書き込みながらAIエージェントを作成することができます。
今回は、[構成]を選択し、テンプレート機能を用いてAIエージェントを作成したいと思います。
ここから、生成AIに投げるプロンプトの作成を支援してくれるプロンプト生成エージェントを作成してみようと思います。
まず、エージェントの名前を「プロンプトジェネレーターくん」にし、どのようなエージェントであるか説明を記載しました。この説明はエージェントを使用するユーザーに向けた説明文の為、エージェントの挙動には影響はありません。
続いて、エージェントへの指示文を入力します。この指示文はエージェントの行動指針となるため、エージェントにしてほしい挙動は詳細に指示する必要があります。
今回は、エージェント作成時のテンプレートを参考に指示文を記載しました。後述するナレッジ機能にて社内のプロンプトに関する資料を指定するため、その資料を必要に応じて参照するような指示をしました。
### 目的:
Copilot のプロンプトの作成と改善をサポートし、フィードバックとガイダンスを提供します。
### 目標:
1. **要求の理解**: プロンプトの作成、分析、修正に関して、ユーザーがサポートを求めているかどうかを特定します。
2. **プロンプトの要件**: 質問内容:
- **目標**: 必要な Copilot の応答。
- **文脈**: 背景情報。
- **ソース**: 具体的な情報ソースや例。
- **期待**: 望ましい形式や構造。
- 不足している情報は 1 つずつ要求します。
3. **プロンプトの生成***: すべての要件を必ず満たし、完成版のプロンプトを生成して提供します。
4. **プロンプトの分析**: 提供内容:
- **元のプロンプト**
- **改善されたプロンプト**
- **変更点**: それぞれの変更が行われた理由。
5. **プロンプトのコンプライアンス**: 責任ある AI ガイドラインに準拠しているかどうかを確認し、問題点があれば詳細を説明します。
6. **プロンプトの修正**: 問題のあるプロンプトと問題点を質問してから、改善されたバージョンを提供します。
7. **プロンプトの例**: 次の例を挙げます:
- **目標**
- **文脈**
- **ソース**
- **期待**
- プロンプト、目的、説明を含めること。
### 全体の方針:
- 多くの質問でユーザーを圧倒させないこと。
- 明確化とフォローアップの質問を行うこと。
- 責任ある AI ガイドラインを考慮すること。
- 改善に役立つヒントと例を提供すること。
- 励ましを与え、熱心で専門的な表現を保つこと。
- 会話全体で文脈を維持すること。
- 質問された場合は、対応している機能を簡単に説明すること。
- 各サブトピックの後に、さらにサポートが必要かどうかを尋ねます。
- 必要に応じて、ナレッジ内にあるプロンプトに関する資料を参考にすること。
続いて、AIエージェントが使用するナレッジを設定していきます。
ナレッジでは、WebサイトおよびSharePointoのURLを入力することで、オープンなデータや業務ファイルをナレッジとしてAIエージェントが使用できるようにします。現在使用できるファイルの種類は、(.doc,.docx,.html,.pdf,.ppt,.pptx,.txt,.xls,.xlsx)です。
各ファイルにはサイズの上限がありますが、詳細を知りたい方はMicrosoftの公式ドキュメントをご覧ください。
ここでは、社内のプロンプト共有用フォルダを選択したいと思います。
今回は使用しませんが、コードインタープリターと画像ジェネレーターの使用可否も選択することが可能です。これらをオンにした場合、エージェントは必要に応じてコードと画像の生成を行うことができるようになります。
最後に、スタータープロンプトを設定していきます。
スタータープロンプトはAIエージェントと会話を開始する際に選択することでプロンプトをチャット欄に入力することができる、プロンプトテンプレートのようなものです。
今回は、指示文と同様テンプレートを参考にスタータープロンプトを設定していきます。
全ての項目を入力し終えたら、[作成]ボタンを押下することでAIエージェントが作成されます。作成したエージェントはURLが発行され、他ユーザーに共有することが可能です。
AIエージェントを作成した際は閲覧権限が自分のみになっているため、共有を行いたい場合は[共有設定の変更]を行う必要があります。
エージェントを作成すると、Microsoft 365 Copilot Chatの右側からエージェントを選択できるようになります。
では、実際にエージェントを使用してみたいと思います。
スタータープロンプトに記載した「プロンプトの生成」を選択し、入力欄に「コパイロットに使用するプロンプトの生成を手伝ってください。」とテンプレートを挿入します。
送信すると、指示文に指定したとおりユーザーが欲するプロンプトの要件をエージェントが聞き返していることがわかるかと思います。
また、ナレッジで設定した情報も記載されており、必要に応じてエージェントが情報を収集していることがわかります。
ここでは、議事録を作成するためのプロンプトを生成してもらいました。エージェントと複数回やり取りを行った結果、指示通り以下のようなプロンプトが生成されました。
ありがとうございます、Shibuya, Yukiさん。以下のプロンプトを使用して、顧客へ共有するための議事録を作成することができます。
議事録の目的
クラウドインフラの構築案件に関する進捗確認の会議の目的は、進捗状況の確認と問題点の解決です。
議事録の内容
議事録には以下の情報を含めます:
会議の参加者
議題
議論の内容
決定事項
ネクストアクション
宿題事項
議事録の形式
議事録は箇条書き形式で作成します。
議事録の共有方法
議事録は共有ドライブにアップロードして共有します。
以下のプロンプトを使用して、議事録を作成してください:
# クラウドインフラ構築案件進捗確認会議議事録
## 目的
進捗状況の確認と問題点の解決## 内容
- **参加者**: [参加者の名前]
- **議題**: [議題の詳細]
- **議論の内容**: [議論の詳細]
- **決定事項**: [決定事項の詳細]
- **ネクストアクション**: [ネクストアクションの詳細]
- **宿題事項**: [宿題事項の詳細]## 形式
箇条書き形式## 共有方法
共有ドライブにアップロードして共有
このプロンプトを使用して、顧客へ共有するための議事録を作成してください。何か他にお手伝いできることがあれば教えてください。
利用シーンとメリット、注意点
利用シーン
特定のタスクに特化したAIエージェントを作成したい場合に利用を検討できます。生成AIに利用シーンを3つほど考えてもらいました。
- 社内FAQ/ヘルプデスクエージェント
- 概要:Microsoft 365 上のナレッジベース(SharePoint や Teams のドキュメント)を活用し、社員からのよくある問い合わせに即時回答。
- メリット:問い合わせ対応工数を削減し、ナレッジの一元管理が可能。
- 会議議事録自動生成エージェント
- 概要:会議の議事録テンプレートをナレッジとして登録し、会議メモや音声文字起こしをもとに箇条書きで議事録を作成。
- メリット:手作業の議事録作成時間を大幅に短縮し、フォーマットの統一も容易。
- 営業レポート支援エージェント
- 概要:CRM や Excel データから最新の商談状況を抽出し、週次/月次レポートをドラフトで生成。
- メリット:データ取りまとめの負担を軽減し、営業マネジメント層への報告精度を向上。
メリット
ノーコードでエージェントを作成することができる為、技術に疎い場合でも導入しやすいといったメリットがあります。
また、社内ナレッジや指示文を駆使することにより、プレーンなCopilotよりもより柔軟に、特定のタスクに特化したAIエージェントを作成することができます。
注意点
社内ナレッジを使用するエージェントを作成できる都合上、エージェントを共有する範囲や権限管理には注意が必要です。
また、単純な質問や定型処理は指示文で指定することができるためエージェントの強みとなりますが、複雑な業務を行わせることはできません。
まとめ
Copilot Studio エージェントビルダーの基本機能から、実際のエージェント作成手順までを丁寧に解説しました。
自然言語だけでノーコードに業務特化型の AI エージェントを立ち上げる流れを、「プロンプトジェネレーターくん」の事例をもとにご紹介しています。ナレッジ設定やスタータープロンプトの活用方法、実際のチャットによる動作確認を通じて、具体的な操作感を掴んでいただけたかと思います。
ノーコードで導入できる手軽さと、社内資料を活用した高いカスタマイズ性が大きな魅力です。一方で、共有範囲や権限管理、複雑な業務フローへの適用には注意が必要です。ぜひ本記事を参考に、貴社の業務効率化やナレッジ活用に Copilot Studio エージェントビルダーをお役立てください。
プロンプト作成以外のユースケースでの利用法については、次回以降のブログ連載で記載していこうと思います。
おまけ(Copilot Chatによる本記事の要約)
この記事は、Copilot Studioエージェントビルダーを使ってAIエージェントを作成する方法を紹介しています。エージェントビルダーは、自然言語で指示を入力するだけで、特定の業務に特化したAIエージェントを作成できるツールです。記事では、エージェントの名前や指示文を設定し、ナレッジを追加してエージェントを作成する手順を説明しています。また、エージェントの利用シーンやメリット、注意点についても触れています。ノーコードで簡単に導入でき、業務効率化に役立つ点が強調されています。