Microsoft Copilot Studio(以下、Copilot Studio)が大きく刷新され、AIエージェントを作るための画面や仕組みが新しくなりました。
本記事は、Copilot Studio という名前は聞いたことがあっても、具体的に何ができて今回どう変わったのかはまだつかめていない、という方に向けた解説です。読み終えると、刷新の全体像と、新しくなった作成画面・主な新機能・課金の考え方をひととおり把握できます。専門的な前提知識は必要ありません。
この記事のポイントは次のとおりです。
- Copilot Studio は、プログラミングを多く書かなくてもAIエージェントを作れるツールです。
- 2026年6月に新しい作成体験がプレビューとして公開され、2026年8月3日に「GitHub Copilot ハーネス」という名称で一般提供(GA)となりました。
- 作成画面は「Build」「Preview」「Evaluate」「Monitor」の4つのモードに整理されました。
- 「Skills」「Memory」「Microsoft IQ」など、エージェントをより賢く動かすための機能が加わりました。
- 新しい作り方は、Microsoft 365 Copilot ライセンスの有無にかかわらず従量課金になります。
※ Copilot Studio は仕様変更が頻繁なため、実際の検討や導入判断の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。
Copilot Studio とは何か
Copilot Studio は、Microsoft が提供する、AIエージェントを作るためのツールです。
ここで言うAIエージェントとは、質問に答えるだけでなく、与えられた目的に向けて複数の作業を自分で段取りしながら進めるAIを指します。たとえば「問い合わせ内容を読み取り、関連情報を調べ、必要なら担当部署に引き継ぐ」といった一連の流れを、人に代わって進める役割です。
Copilot Studio の特徴は、こうしたエージェントを、コードを大量に書かずに作れる点にあります。画面の案内に沿って指示や知識を与えることで、専門の開発者でなくても作成に取り組める、いわゆるローコードのツールです。
今回の刷新で何が変わったのか
新しい Copilot Studio は、一般提供として案内されていましたが、その後「本番環境で利用できるものの、現時点ではパブリックプレビューである」旨の注記が追記されています。Microsoft Learn 側では「production-ready preview(本番利用可能なプレビュー)」と整理されていました。
その後、2026年8月3日に「GitHub Copilot ハーネス」という正式名称とともに一般提供(GA)となりました。6月の発表からGAまでは、およそ2か月のプレビュー期間があったことになります。
今回の刷新は見た目の変更にとどまらず、土台から作り直された大きな更新です。中心にあるのは、単純な作業の自動化だけでなく、複数の手順や判断をまたぐ業務まで扱えるようにするという考え方です。
その鍵となるのが、刷新されたオーケストレーターです。あらかじめ会話の分岐を細かく作り込む方式から、AIが利用者の意図を読み取り、使える知識やツールを見て段取りを自分で組み立てる方式へと、重心が移りました。公式ブログでは、この新しいオーケストレーターにより評価性能が約20%向上し、消費トークンが約50%削減されたと説明されています。
従来の作り方と新しい作り方の違いは、次のとおりです。
| 観点 | 従来の作り方(クラシック) | 新しい作り方 |
|---|---|---|
| 進め方の中心 | あらかじめ用意した会話の分岐(トピック) | AIがその場で段取りを組む |
| 作成者の主な仕事 | 分岐や経路を細かく作り込む | 指示・知識・使えるツールを整える |
| 得意な範囲 | 想定どおりの問い合わせ | 言い回しの揺れや複数の依頼、多段階の業務 |
| エラーが起きたとき | 用意した経路のとおりに進む | 自動でやり直したり、別の手を試す |
新しい作成画面:4つのモード
刷新で最も目に見える変化が、作成画面の構成です。新しい画面は、上部が「作成」「プレビュー」「評価」「監視」の4つのモードに整理され、作る・試す・評価する・見守る、という流れに沿って作業を進められます。従来は9つあった設定タブが4つに集約された形で、ツールや知識の設定は「Build」にまとまりました。
各モードの役割は、次のとおりです。
| モード | 役割 |
|---|---|
| 作成 | エージェントの指示・知識・ツール・スキル・モデルを組み立てる |
| プレビュー | 作成中のエージェントと会話しながら動作を試す |
| 評価 | テストセットを使って応答の品質を評価する |
| 監視 | 公開後に実行されたタスクや動きを見守る |

なお、新しい体験では従来あった「トピック」の設定が作成画面から姿を消し、トリガー(自動起動のきっかけ)はワークフロー側から扱う形に整理されています。公開先として選べるチャネルの選択肢も従来と異なるため、既存のエージェントをそのまま置き換える前提では考えないほうが安全です。
加わった主な新機能
今回の刷新では、エージェントをより賢く、より幅広く動かすための機能が加わりました。主なものは次のとおりです。この中から「Microsoft IQ」について、ご紹介いたします。
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| Skills | 特定の作業の進め方を、文章(マークダウン)で書いて再利用できる仕組み |
| Memory | やり取りや文脈を利用者ごとに覚えておく機能 |
| Microsoft IQ | 組織内のデータやナレッジをエージェントに供給する情報基盤 |
| ワークフロー | 作業の流れを1つの画面で組み立て、途中にエージェントを差し込める仕組み |
Microsoft IQ
Microsoft IQ は、AI エージェントや Copilot に、組織や業務を理解するための情報を提供する共通のインテリジェンス層です。「Microsoft の各種ツールをつなぐ連携機能」ではなく、エージェントが利用者の仕事、組織のデータ、蓄積された知識などを適切な文脈で理解するための仕組みである点が重要です。
メール、予定表、ファイル、Teams のメッセージなどの業務情報だけでなく、構造化されたビジネスデータ、組織が管理するナレッジ、Web 上の公開情報も、それぞれの役割を持つ「IQ」を通じてエージェントに提供します。
あらかじめ登録した固定の文書だけを参照する従来のナレッジとは異なり、利用者の状況やアクセス権限、業務データの変化などを踏まえて、必要な情報を文脈として活用できる点が特徴です。
Microsoft IQ は、次の4つの要素で構成されています。
- Work IQ
- メール、チャット、ファイル、会議、予定表、人物情報などをもとに、利用者の仕事の進め方や周囲との関係性、業務の流れを理解します。
- 利用者ごとのアクセス権限を尊重しながら、その人の業務状況に合った回答や支援につなげます。
- Fabric IQ
- Microsoft Fabric に蓄積されたデータを、顧客、製品、売上などの業務上の意味や、それぞれの関係性と結び付けて理解できるようにします。
- これにより、エージェントが単なる数値ではなく、業務の状態やルールを踏まえてデータを扱えるようになります。
- Foundry IQ
- 組織の規程、マニュアル、正式文書、SharePoint の情報などを、エージェントが利用しやすいナレッジとして提供します。
- 複数のエージェントから再利用できるナレッジ基盤を構築し、適切な情報を検索して回答に活用できるようにします。
- Web IQ
- Web 上の最新情報や公開情報をエージェントに提供します。
- 組織内の情報だけでは回答できない場合に、外部の情報を組み合わせることで、より幅広い調査や回答を支援します。
これらを組み合わせることで、エージェントは、利用者の仕事内容、組織が保有するデータやナレッジ、Web 上の情報を横断して理解できます。その結果、一般的な回答を返すだけでなく、利用者や業務の状況に合った、より文脈のある支援が可能になります。
まとめ
Copilot Studio の新しい作成体験を使えば、会話の分岐を細かく組み立てなくても、言葉で伝えるだけでAIエージェントを作れます。今回紹介した内容を振り返ると、次のとおりです。
- 新しい作成体験は2026年6月にプレビューとして公開され、2026年8月3日に「GitHub Copilot ハーネス」として一般提供(GA)となりました。作成画面は「作成」「プレビュー」「評価」「監視」の4モードに整理されています。
- 「Skills」「Microsoft IQ」などが加わり、手順の再利用、組織データの活用ができるようになりました。
- 新しい作り方は Microsoft 365 Copilot ライセンスの有無にかかわらず従量課金となり、従来のクラシックな作り方との相互変換もできません。まずは小さなエージェントを1つ作り、「プレビュー」で動きを確かめてみてください。
宮瀬 駿斗(日本ビジネスシステムズ株式会社)
Microsoft 365システム関連を担当しています。料理・お菓子を作ることが好きでよく作ります。 その他の趣味は、謎解き・ゲーム・読書・筋トレなどです。
担当記事一覧