Azure上にデプロイしたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のVMにおいて、知っておくべき情報や、よくある設定、覚えておくと便利な機能などを、自身の経験をもとに数回にわけて説明します。
本記事では、Azure上にデプロイしたRHEL VMのライセンスやサポートの考え方や、Red Hatが提供する便利な機能を説明します。
なお本記事はRHEL9のVMを使用して手順を確認しました。その他のバージョンを利用する場合は、記事内の参考URLより利用するバージョンにあわせた手順を確認してください。
Red HatのライセンスとAzureのサポート
以下では、Azure RHEL VMにおけるライセンス形態や、Microsoftからのサポート有無について説明します。
Red HatのライセンスとAzure VMの利用料金
AzureでRHEL VMを利用する場合、ライセンスの利用方法は大きく2つあります。
- 従量課金制(PAYG)
- Azure VMの利用料金に、RHELのライセンス費用が含まれます。
- ライセンスの登録作業や、追加のライセンス購入は不要です。
- ハイブリッド特典(BYOS)
- サブスクリプション持ち込みと呼ばれることもあり、既存のRed HatサブスクリプションをAzureへ持ち込み利用します。
- Azure VMの利用料金からRHEL OSのライセンス費用が除かれます。
なお、ここで記載する「サブスクリプション」とはRHEL OSを利用するためのライセンスを表す言葉であり、Azureのサブスクリプションとは異なるので注意してください
従量課金制の設定画面
Azure RHEL VMデプロイ時に、以下の画面でチェックを入れずに進めた場合、従量課金制となります。
Azure RHEL VMデプロイ後、Azureポータルから対象VMを選択し、[設定]-[オペレーティング システム]をクリックすることで、現在のライセンス形態を確認できます。
以下は従量課金選択時の画面です。
サブスクリプション持ち込みの設定画面
Azure RHEL VMデプロイ時に、以下の画面でチェックを入れて進めた場合、ハイブリッド特典が適用されます。なおAzureへ持ち込んだサブスクリプションをAzure VMに適用するためには別途操作が必要です。
Azure RHEL VMデプロイ後、Azureポータルから対象VMを選択し、[設定]-[オペレーティング システム]をクリックすることで、現在のライセンス形態を確認できます。
以下はハイブリッド特典選択時の画面です。なおAzureへ持ち込んだサブスクリプションをAzure VMに適用するためには別途操作が必要です。
Azure RHEL VMにおけるMicrosoftのサポート
Azure RHEL VMにおいてRHEL OSに関する問い合わせを実施したい場合は、Azureポータルからサポートケースを作成することで問い合わせが可能です。
なお、問い合わせを行うにあたり、事前に後述の「Red HatアカウントとAzureアカウントへの紐づけ」手順を実施する必要があります。
カスタマーポータルとRed Hat Insightsの利用
以下ではRed Hatが提供するツールである、カスタマーポータルとRed Hat Insightsについて説明します。
これらは、Azure RHEL VMの利用料金に含まれており、追加の費用等は発生しません。
Red Hatカスタマーポータル
RHELを使ううえで知っておくべきツールのひとつは、Red Hatカスタマーポータルです。ここでは、RHELの各種ソフトウェアやパッケージの入手、製品ナレッジへのアクセスなど、さまざまな特典が利用できます。
Red Hatカスタマーポータルは、従量課金、持ち込みライセンス(BYOS)どちらの場合でも、追加費用無しで利用することが可能です。
Red HatアカウントとAzureアカウントへの紐づけ
Red Hatカスタマーポータルを利用するために、Red HatアカウントとAzureアカウントを紐づける必要があります。
以下で、Azure RHEL VMデプロイ後の操作手順を説明します。
※ Red Hatアカウントを所持していない場合は、新規で作成してから下記の操作を行ってください
1. Red Hatアカウントと紐づけるAzureアカウントでAzureポータルにログインする。
2. 対象VMの左ペインで[ヘルプ]-[Red Hat カスタマー ポータル]を開き、画面中央の「カスタマー ポータルに移動」をクリックする。
3. 「新規ユーザーの登録」画面でRed Hatアカウントを作成する。
※ 既に所持しているRed Hatアカウントを利用する場合は、そのアカウントでログインを行う。
4. 以下の画面が表示されることを確認する。
Red HatカスタマーポータルのURL
Red Hatカスタマーポータルでは、Red Hat製品のナレッジの閲覧やソフトウェアのダウンロード等が可能です。
Azureポータルから移動するか、以下URLからRed Hatアカウントでログインすることでアクセスが可能です。
Azureポータルから移動する場合は、先の「Red HatアカウントとAzureアカウントへの紐づけ」手順2.の画面から移動します。
Red Hat Customer Portal - Access to 24x7 support and knowledge
Red Hat Insights
Red Hat Insightsは無料で利用できるRed HatのSaaSサービスです。
Red Hat Insightsの管理画面では、登録されたシステムの情報が一元管理できます。例えば、システム毎のインストールパッケージの一覧や、脆弱性のあるパッケージに関するアップデート情報等が確認できます。
Red Hat Insightsの利用
以下で、Red Hat Insightsの利用を開始する手順を説明します。
1. Tera Termで対象VMへログインする。
2. 対象VMで以下のコマンドを実行し、rootへスイッチする。
# sudo su -
3. 対象VMで以下のコマンドを実行し、Red Hat Insightsの設定ファイルを編集する。
# vi /etc/insights-client/insights-client.conf
<ファイル末尾に以下を追記する>
auto_config=False
authmethod=BASIC
username=<先の手順で作成したRed Hatアカウントのユーザー名>
password=<先の手順で作成したRed Hatアカウントのパスワード>
4. 対象VMで以下のコマンドを実行し、対象VMをRed Hat Insightsへ登録する。
# insights-client --register
<実行結果>
(途中略)
Writing RHSM facts to /etc/rhsm/facts/insights-client.facts ...
Uploading Insights data.
Successfully uploaded report from <対象VMのホスト名> to account <アカウント固有値>.
View the Red Hat Insights console at https://console.redhat.com/insights/
Red Hat Insights管理画面
Red Hat Insightsの管理画面は下記URLからアクセスが可能です。
先の「Red Hat Insightsの利用」でRed Hat Insightsに登録したVMの、インストールパッケージや脆弱性情報が確認できます。
Red HatのライセンスとAzureのサポートの参考URL
Red HatのライセンスとAzureのサポートについての参考URLです。
- Azure 上の Red Hat ワークロードの概要 - Azure Virtual Machines | Microsoft Learn
- Linux VM の Azure ハイブリッド特典を調べる - Azure Virtual Machines | Microsoft Learn
- Microsoft Azure の問題で Red Hat のサポートを受ける方法 - Red Hat Customer Portal
- Microsoft Azure に関するよくある質問 (FAQ) と推奨事項 - Red Hat Customer Portal
Red HatカスタマーポータルとRed Hat Insightsの参考URL
Red HatカスタマーポータルとRed Hat Insightsの利用に関する参考URLです。
- Microsoft Azure のお客様が Red Hat カスタマーポータルにアクセスする方法 - Red Hat Customer Portal
- パブリッククラウド上のRHELでもRed Hat Insightsを使ってセキュアに運用しよう - 赤帽エンジニアブログ
おわりに
Azure上にデプロイしたRHEL VMで知っておくべき情報や覚えておくと便利な機能を説明しました。
これからAzure RHEL VMを始める方にも、すでに利用を開始されている方にも、本記事が少しでもお役にたてれば幸いです。
山﨑 優美(日本ビジネスシステムズ株式会社)
ハイブリッドクラウド本部に所属。Windows Server・Linux、どちらのOSでもさわれるインフラエンジニアです。3児のママも兼務しています。
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