Azure Virtual Desktop(AVD)の導入を検討していく中でランニングコストをなるべく抑えたいなどのご要望も出てくるのではと思います。第4回はランニングコストの削減方法としてAVDの電源管理についてご紹介いたします。
※記載の内容は執筆時点の公開情報を元にしております。
AVDにおける電源管理について
電源管理が必要な理由
AVDで電源管理を行う大きな理由は、上記で記述したランニングコスト削減としてのコスト管理が挙げられます。Azureは従量課金制ですので、利用した分だけコストが発生します。
特にAVDはユースケースにより異なりますが、展開するセッションホストの台数が多くなり、起動状態が継続することが考えれます。
そのため、電源管理を行うことでユーザーが接続していない起動中セッションホストを停止し、ランニングコストを抑えることが可能となります。
具体例
例として、VMサイズStandard_D8ds v5 のセッションホスト10台のAVD環境でのランニングコストの違いは以下となります。
比較すると1か月あたり¥707,200 ランニングコストの削減が可能となります。
- 電源管理を行わない場合(24時間起動)
- ¥130×24時間×30日×10台=¥936,000/月
- 電源管理を行う場合(1日8時間、週5日起動)
- ¥130×8時間×22日×10台=¥228,800/月
※2023年3/15時点でStandard_D8ds v5の料金は¥129.839であるため¥130として計算
※ディスク、プロファイル使用料、データ転送料等は比較対象外
AVDの電源管理方法
AVDの電源管理方法はホストプール展開方式により選択肢が異なります。
ホストプール展開方式については【AVD 虎の巻】第3回 Azure Virtual Desktopの構成 - JBS Tech Blogで詳しく説明しております。
マルチセッションの電源管理方法について
マルチセッションの電源管理方法として、スケーリングプランを利用した方法が挙げられます。
スケーリングプランはホストプール単位で割り当て可能なAVD専用の電源管理方法となります。
ホストプールへの割り当て時はスケーリングプランと同リージョンホストプールのみ割り当て可能のため、注意が必要です。
※日本だと現時点では東日本リージョンのみ対応、西日本リージョンは未対応です。
シングルセッションの電源管理方法について
シングルセッションの電源管理方法として、Azure Automationを利用した方法が挙げられます。
Azure AutomationはAzure VMの電源管理としても利用されております。
この方法では特定時間にセッションホストの起動/停止が可能となります。
Start VM on Connectについて
マルチセッション、シングルセッション共に利用可能なAVD専用の自動起動接続機能となります。
本機能と上記電源管理方法を組み合わせることにより、柔軟な電源管理が可能となります。
詳細な説明については後章でご説明します。
スケーリングプランについて
今回はAVD専用の電源管理方法であるスケーリングプランにポイントを絞ってご説明します。
スケーリングプランの特徴
スケーリングプランの特徴は以下となります。
- 各曜日に対してスケジュール設定が可能(特定日、祝日の設定は不可)
- 特定時間帯でのセッションホストの常時起動設定が可能
- セッションホストに対するユーザー接続数に合わせ、事前に次のセッションホストの起動が可能
- ユーザーの強制的なログオフが可能
- GPOのセッションタイムアウトのポリシーと組み合わせ、接続数が0になったセッションホストの停止が可能
スケーリングプランで設定する時間帯について
スケーリングプランでは4つの時間帯を設定します。
各時間帯の説明は以下となります。
- ランプアップ:利用者がログインし始める時間帯
- ピーク時間:利用者のログインが集中する時間帯
- ランプダウン:利用者がログオフし始める時間帯
- ピーク時以外の時間:利用者のログイン数が最小となる時間帯
9時始業、18時終業の場合、各時間帯の設定例は以下が考えられます。
除外タグについて
スケーリングプランはホストプール単位で割り当てるため、ホストプール上の全セッションホストへ設定が適用されます。
その際に除外タグを設定することで、特定のセッションホストをスケーリングプラン対象から除外し、メンテナンス等の作業を行うことが可能です。
除外タグはスケーリングプラン設定とセッションホストのAzure VMリソースへ除外タグ名を付与することで適用されます。
利用条件について
スケーリングプランの利用条件は、Azure Virtual Desktop ※ サービス プリンシパルにIAMロールを割り当て、スケーリングプランリソースを作成することで利用可能となります。
IAMロールとしては、Desktop Virtualization Power On Off 共同作成者を割り当てる必要があります。
※テナント作成時期によりWindows Virtual Desktopと表示される場合がございます。
詳しくは以下Microsoftサイトを確認してください。
Azure Virtual Desktop の自動スケーリング プランを作成する | Microsoft Learn
Start VM on Connectについて
最後にStart VM on Connectについてご説明します。
Start VM on Connectの特徴
Start VM on Connectの特徴は以下となります。
- ユーザー接続時に停止中セッションホストを自動で起動させ、接続することが可能
- シングルセッション、マルチセッション共にサポートしているため、起動処理はStart VM on Connect、停止処理はシングルセッションはAzure Automation、マルチセッションはスケーリングプラン等を利用することで柔軟なAVDの電源管理が可能
- セッションホストの起動処理が行われるため、起動完了し接続可能となるまでに時間経過が数分必要
- セッションホストの起動処理時、以下メッセージがユーザーに表示されるため、ユーザー側もセッションホスト起動処理の認識が可能
利用条件について
利用条件はスケーリングプランと同じくAzure Virtual Desktop サービス プリンシパルにIAMロールを割り当てることで利用可能となります。
※ テナント作成時期により「Azure Virtual Desktop」は「Windows Virtual Desktop」と表示される場合がございます。詳しくは以下Microsoftサイトを確認してください。
Azure Virtual Desktop 用の Start VM on Connect を設定する | Microsoft Learn
設定はホストプールのプロパティ設定から可能です。
IAMロールとしては、Desktop Virtualization Power On 共同作成者の割り当てが必要ですが、スケーリングプラン時と同じくDesktop Virtualization Power On Off 共同作成者を割り当てることでも利用可能となります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回はAVDの電源管理についてご紹介させていただきました。
電源管理を上手く利用することでランニングコスト削減が可能となります。
特にスケーリングプランについては、AVDの特徴であるマルチセッションでの利用が可能ですので、是非ご活用いただければと思います。
ご覧いただきありがとうございました。次回の連載もお楽しみに。
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